リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 ホフステッドは、異なる文化集団の情動や心理的な特徴を研究するオランダの社会心理学者です。これまでも彼の「Dimensions of National Cultures」のモデルの中のいくつかの尺度を紹介してきました。残るもう一つの尺度は、「男性らしさ 女性らしさ」です。これは、生物学的ではなく、社会・文化的に規定された「社会的な性」の度合いを測ったものです。例えば、男性らしさの高い社会では、性別による社会的役割の区別が明確で、男性は自己主張が強く、野心的でたくましいものであり、現実的な事柄に対処するもの、女性はおおらかで優しく、情緒的な事柄に対処すると考えられています。

 一方で、女性的価値の高い社会では性別による社会的役割の区別が不明確、とされています。家庭でも男女の役割は重なり合っており、社会的な功績、平等、職業生活の質などが重視される社会です。また、対立は妥協と交渉によって解決され、失敗はたいしたことではないと考えられます。弱者へのいたわりもあるとされる社会です。

 男性的価値の高い文化には、日本、オーストラリア、ベネズエラなどが挙げられます。実はホフステッドの調査によると、日本は53カ国中ダントツナンバーワンのスコアで、100点中95点でした。アメリカは62点でどちらかというと男性らしさが若干強い側面も見られるものの、大方、「女性らしさの強い社会」と言ってよいでしょう。日本ももちろん価値基準が変わってきており、ステレオタイプがあることも確かですが、やはりまだまだ「男性らしさ」が強い傾向にあるとされています。女性的価値が高い国はスウェーデン、オランダなどが挙げられます。

「カワイイ」は褒め言葉?!

 「男らしさ」や「女らしさ」といったステレオタイプの形成には、メディアの影響も強いものです。特に日米間でこれらの違いが顕著に見えるのは、メディアに登場する人気タレントのタイプです。

 AKB、SKE、SDN…、アメリカに移住して19年目になる筆者には、どれがどのグループだか見分けもつかないのです。アメリカ人の主人も昨年末の紅白歌合戦を見ながら、ポツリ。「みんな同じだ…。アメリカにはこういう女性タレントはいないね。だってこれじゃ売れないから」。「でもまあキュート(カワイイ)じゃないの」と言う筆者に対し主人は、「キュートだなんて、子どもじゃあるまいし」。

 そうなんです、アメリカでは「キュート」は小さな子どもや動物などに対して使う表現なのです。日本人女性の場合、「君、カワイイね」と言われたら褒め言葉として受け取り、少なからず嬉しく感じるのではないでしょうか。しかしアメリカでは、「キュート」が褒め言葉になるのはせいぜい小学校低学年まで。純粋無垢で世間知らず、自分では何もできない無力な子ども。そんなイメージが「キュート」です。

 前述のホフステッドのモデルで日本がダントツ「男性らしさ」の強い文化であった通り、日本文化の中では、男性は力強くたくましい姿、女性は優しくてかわいらしい姿、が良しとされている傾向にあるのではないかと思います。

 実は、最近のアメリカでは「Kawaii」という単語が英語化しています。ただし、これはアニメキャラクターなどのことを指し、アニメオタクな一部のアメリカ人がカルト的に崇拝する文化が「Kawaii」です。一般のアメリカ社会では、「カワイイ」は決して褒め言葉ではありません。ですからアメリカ人の大人の大人の女性に「君、キュートだね」なんて言ってしまったら…。「馬鹿にしてるの?!」とムッとされるかもしれませんから気をつけてください。