中村 文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

『プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える』
『プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える』
アネット・シモンズ 著 / 池村 千秋 訳 / 海と月社 / 2,520円(税込) / 343ページ

 ストーリーテリングという手法がある。ASTD(American Society for Training & Development)のカンファレンスなどでは、何年も前から積極的に紹介されている手法だ。人は数値・データや理論だけではなかなか動かず、感情が伴って初めて動くものである。その人の感情に大きな働きかけをすることができるパワーがストーリーにはある。

 著者によると、ストーリーとは「裸の真実に服を着せる」ようなものだという。その真実がいかに正しいものであったとしても、「裸の真実(つまり客観的事実)」をそのままぶつけるだけでは反論、反感、拒絶などを招きかねない。だが、ストーリーは人を引きこみ、行動を変えさせる力を持っている。

 人を動かしたいときに役立つのは、以下の6種類のストーリーだという。(1)「私は何者か」というストーリー、(2)「私はなぜこの場にいるのか」というストーリー、(3)ビジョンを伝えるストーリー、(4)スキルを教えるストーリー、(5)価値観を具体化するストーリー、(6)「あなたの言いたいことはわかっている」というストーリー。この6種類、どれをとっても人事としての仕事の場面にすべてあてはまるものではないだろうか。

 社外の人に対しては、ときに会社の顔として語ることもあるだろう。また社内に向けては、スキルを教えることはもちろん、ビジョンや価値観などを伝え、具体化していくことも大切な役割である。さらに社員からの様々な相談を受ける場面では、「あなたの言いたいことはわかっている」ストーリーが役立つであろう。最終章にはケーススタディとしてストーリーで成功した会社の物語もある。

 人と関わり、人を動かす役割を担う人事のメンバーとして、磨きたいスキルである。

関連図書

『Stories Trainers Tell: 55 Ready-to-Use Stories to Make Training Stick (Essential Knowledge Resource)』[ペーパーバック]
Mary B.Wacker、Lori L.Silverman 著 / Pfeiffer / 3,780円(税込) / 434ページ