学習は深くなければならないというものではありません。現実の生活を考える時、私たちは深さは関係なく、常に経験から学ぶということを実践しています。デービット・コルブが提唱した経験学習モデルは、この学習サイクルを「経験→省察→概念化→実践」の4段階がサイクルとして回っているものだとしています。

■コルブの経験学習モデル
経験:何かが起こった
↓(1)
省察:起こったことを振り返る
↓(2)
概念化:実際におこったことを一般概念として抽象度をあげる
↓(3)
実践:(そうだと思ったことを)実際にやってみる

 普通に物事を体験したとき、このような経験学習のサイクルは自動的に回っていくと考えられます。そして、実はこのサイクルを回すことを促進する「3つの問い」があります。例えば、上記の(1)を促進するためには「何が起こっているのか?」という問いかけがとても重要です。多くの場合、起こっている何かをスル―してしまうことによって、学習サイクルが回らず、いままで同じことを繰り返してしまう学習不全状態になることが多いからです。

 また、(2)を促進するためには、「起こったことの意味は何か?」「ここから何を学べるか?」という問いかけが効果を発揮します。この問いかけがきちんとできるかどうかで、学習の深さが決まるともいえるかもしれません。つまり、この問いに適切に答えられた時、人はより高度な認知を得ることができるのです。

 そして、最後の(3)では「この学びをいかに活かすのか?(今後にどう使うのか?)」という問いかけが大切です。学びを転用する、実践に結びつけることが、新たな行動を生み出します。実際、本当に自分自身本当にそうだと思っている「概念」に対して、私たちは実践するし、行動も起こすものなのです。

「3つの問いをつぶさない」ことが大切

 普段の生活のなかでは、無意識にこの3つの問いかけを自分自身でおこなっていることが多いかもしれません。ただ、学習能力が高いといわれる人は、この問いを意識的に活用しているとも考えられます。また、自分だけでなく相互フィードバックがきく状況のなか、集団のなかでこの3つの問いが行われる時、私たちの個人の学習能力と組織の学習能力の両方、すなわち組織やチームの変わる力がより強くなるといえます。

 人が学習し、変容を適切に起こすためには、このような経験学習のサイクルがスムーズに回ることだと思います。そのためには、問いを適切に自問自答することであり、集団のなかでその問いがでること、つまり「この3つの問いをつぶさない」ことが大切です。

 台湾でのカンファレンスで、各国から来た人と交流するなかで、変容を導く学習のデザインは、(その本質は変わらないものの)文化によって違うのだということを思いました。そして、そのデザイン設計は、もしかしたら個々の組織毎にもまた異なるのかもしれません。いま、その解を組織の内部の人と一緒に探しているのが、私たちが行っているものなのかもしれないと思ったりしています。

    <ヒント>
  • 組織変容の導き方の代表的なパターンには東洋型アプローチと西洋型アプローチがある
  • 学習のレベルは深さ、広さがある:知識獲得、スキル習得、行動・態度変容、信条・思込みの変容
  • コルブの経験学習モデル:経験→省察→概念化→実践
  • 学習を誘発する3つの問い:「何が起こっているのか?」「起こった事の意味は何か?(ここから何を学べるか?)」「この学びをいかに活かすのか?」