So What?

 格付け番組のように、1本1000ドルのワインと20ドルのワインの違いを目隠しして飲んで見破るゲームをしたとしましょう。正しく見破ることができたあなた。周囲からどんな反応が得られるでしょうか?

 日本の場合、違いが分かったあなたに賞賛の声が寄せられ、一目置かれることでしょう。

 アメリカの場合はどうでしょうか。すごいことはすごいけれど、「So What?」。つまり、「だから何?」です。

 「あなたにとって、違いを見破ることができるかどうか、というのはどういう意味を持つのか?」と相手は考えます。もしあなたが、ソムリエになろうとしているのなら、正確に違いを見破ることができなたら評価に値することでしょう。しかしそうではないなら、ただ単にあなた「個人」の価値観に基づいたウンチクを語っているだけ。たとえ違いが分からなかったとしても、20ドルのワインの方が1000ドルのワインよりも美味しいと個人的に感じればそれでいいのです。自分が美味しいとも思わないワインに1000ドルも払うほうが、負け組(?!)なのです。重要なのは、誰かが決めた物差しではなく、自分自身の物差し、なのですから。

 本コラムで以前ご紹介したホフステッドの「個人主義的文化」を覚えていますか。覚えていらっしゃる方はもうお分かりですね?

「枠」の外、異文化でも能力を発揮するには

 Textbookな価値観、あるいは既成の「枠」内にはまるかどうかが評価基準となりやすい日本人は、周囲との集団的バランスを第一に考える、集団主義的価値観の強い文化です。ですから、既成の「枠」の中、つまり、同様の価値観を持つ人々が集まる場での結束力はアメリカ人よりも日本人のほうが断然強い傾向にあり、素晴らしいチームワークによって物事を達成することでしょう。

 しかし、慣れ親しんだ価値観という枠の外に一歩出たら。あるいは、一国内でも異文化の人たちが集まるアメリカのような場所ではどうでしょうか。これまで成功の秘訣として使っていた「教科書」が意味を成さなくなってしまいますから、途端に能力が発揮できなくなってしまうのです。異国の地に赴任して異文化の人たちを率いるチームリーダーに就任した場合も、こんなことが起こりえます。

 つまり、自分が当たり前と思っていた「既成枠」とは異なる価値観を持った異文化スタッフを前にすると、これまでの自分のやり方が通用せず、彼らをどう纏め上げて良いか分からなくなってしまうのです。しかしそのような多様な人々の中に、「これは!」と共感できる共通価値観を一つでも見出し、彼らにそれを気づかせることができた時、その異文化チームは素晴らしい力を発揮することになります。

 そこにたどり着くためには、「既成枠」にとらわれない、アンチTextbookな価値観の元にフレキシブルに対応することができる力が必要なのです。それが真のグローバルリーダーといえるでしょう。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: https://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。