大人の発達として、社会的ネットワーク、関係性を構築していくことについて考えるなかで、「成功の循環」というシステム図がたいへん有効です。これはMIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授が提示しているサイクルであり、それによれば成功の循環においては結果・行動・思考・関係性の4つがサイクルを作っているというのです。まず、大人である私たちは、常に結果を求めています。ですがその結果の質を規定しているのは結果を導く行動の質であり、その行動の質を規定しているのは行動につながる思考の質です。そしてこのサイクルによれば、思考の質を規定しているのは関係性の質、そしてその関係性の質は結果の質によって規定され、影響を受けているというというのです。

結果は成功し続けるための一つのプロセスであって、ゴールではない

 このサイクルはかなり面白い現象を示しています。つまり、結果はサイクルの一部であるから、良い結果がでれば関係性がよくなり、関係性が良くなれば組織としての思考も良くなります。こうして思考が良くなってくると内発的な行動が出てきて、結果が良くなる、ということなのです。

成功の循環モデル
(0/4)結果の質 → (1)関係性の質 
   ↑          ↓
(3)行動の質   ← (2)思考の質

 しかしこれが逆に回り始めると「負のサイクル」になってしまいます。結果を出すために行動を管理しようとして、「あれしろ、これしろ」の命令だけを出すようになります。こうなってくると人は無気力感、つまり考えない状態になります。こうして思考の質が低下してくると次に関係性が悪化します。ここで言う思考の質が低いということは、周りの人と一緒に考えるということができない状態です。そうなれば友人知人に本音が言えなくなり、話し合っても納得できなくなったりして、関係が悪化していくのです。そうなってくると、複数の人間のなかで信頼感が生まれるはずもなく、結果も出てこなくなっていきます。これこそが「負のサイクル」であり、行動から思考・関係性が悪化し、結果も悪くなるという悪循環です。このように成功の循環モデルが示していることは、結果もまた成功し続けるための一つのプロセスでしかなく、ゴールではないということです。

 大人が学習し発達する時には、成功の循環モデルのようなサイクルが回っているのではないでしょうか。私たちは決して一人だけでは成長できません。私たちは社会のなかで周りの人にフィードバックを受けながら、体験を培いながら自分自身を変容させ、成長していくものだと思います。

 私はこれまで、自分の体験のなかから、またクライアント企業の皆さんとともに体験している組織開発の現場から、「大人は職場でこそ成長する」という思いがとても強くありました。しかし今回の輪読会で恩師の本を読みながら、大人が学ぶ機会は職業生活のみでなく、職業生活以外の社会生活(家庭、地域や、学校などの所属社会)における経験もまた大きな成長を生み出しているという事に気が付きました

 考えてみれば、妻であること、夫であること、そして親であること、子であること、よき家庭人であること。これらは、人が成長するのに大変重要な体験です。これからの社会を形作るにあたって、職場だけでなく、このような体験をきちんと味わうことのできる生活をおくること、つまり自身のライフワークバランスを考えることが、大人の発達にとってとても大切ことだと思い至りました。

    <ヒント>
  • 大人が育つ条件は「体験から学ぶことができる」こと。体験を学びにかえるのは自己と他者からのフィードバック
  • 生涯成長し続ける鍵はフレームをつくると同時にその打破をすること
  • PMARGEは大人の学習の特徴であり、体験を自分のものにする際の条件
  • 成功の循環モデルは関係性と結果を紐解く鍵になる