察しの文化と言葉の文化

 日本は、氷山のWHATの部分(見えている言動)が非常に少なく、WHYの部分(水面下に隠れている価値観や暗黙の了解など)が非常に多く、ほんの少し発せられた言葉や表情、行動などから、多くを察することが常識だとされる「察しの文化」だと言われます。英語でももちろん、「Read between the lines(行間を読む)」という表現はあります。しかし、それでもアメリカは比較的WHATが多く、WHYが少ない氷山の形をしており、それは見えている言動に頼ったコミュニケーション方法を取る、いわば「言葉の文化」と言われます。

 上記の例のように、自分自身のWHYという定規を相手の行動WHATに当てはめて判断してしまうと、お互いが当然“常識”“非常識”だと考えた上で良かれと思って取った行動であっても、とんだ誤解や不信感の醸成にまで繋がってしまいます。もし、“非常識だ”と感じたときには、「はて、この人の氷山の下には何が隠れているのだろう?」と立ち止まって考えてみるようにしましょう。自分の“常識”を疑ってみることも、異文化対応力の秘訣の一つです。

 ここでひとつ強調しておきたいのは、「異文化」とはなにも国と国との間のことを意味するのではない、ということです。同じ国の中でも地域によって「文化」は異なります。あるいは企業ごと、企業内でも部署や職種ごとにもそれぞれ独特の「文化」があることでしょう。

 最終的には、個々人が生まれ育った環境や学校環境、人間関係などに行き着きます。ですから、身近な日常においても、「氷山」のモデルを使って異文化対応力を磨くことは十分できます。身近な人との意見の相違などが起こった場合、是非「氷山」を念頭に置いて考えてみてください!

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: https://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。