知識・スキル習得以外での通信研修の活用が今後の課題

 今回は、通信研修が企業・組織における人材育成において、どのように効果が認識されているのか、役立っているのかについて分析してきました。今回の分析結果で特徴的なのは次の2点です。

 まず、活用形態ごとの効果性に対する認識については、

8.特定課題連動型(全社)
5.ポイント制連動型
10.資格取得型
3.目標による管理連動型

が肯定的回答の割合および全体平均値ともに高いことから、学習テーマや目標を明確に定めた上で実施する活用形態の効果性が高いと認識されていることがわかりました。「8.特定課題連動型(全社)」や「10.資格取得型」のように、組織として学ぶテーマを明確に設定する場合は、組織としての効果性が高いと認識されやすいようです。「5.ポイント制連動型」や「3.目標による管理連動型」のように、ある程度学習者に学習テーマの選択の幅を与えつつ、中期的なスパンの中で受講が必要な形態や、上司との話し合いなどを通じて受講コースを選択するような緩やかな縛りがある形態も効果性が高いと認識されていました。

 また、業績が好調な企業(現在最高売上高企業)は、そうでない企業(現在最低売上高)と比較して、階層別教育として活用されている「4.昇進・昇格連動型」、職場における上司からの部下育成としての活用がなされる「3.目標による管理連動型」、自己啓発支援制度として活用されている「1.自己啓発型」、「2.ポイント付与・カフェテリア型」の平均値が高い結果でした。業績が好調な企業は、階層別教育、職場マネジメント、自己啓発支援それぞれの観点で通信研修が有効に活用されていることが示唆されたのではないかと思われます。

 通信研修の役立ち度については、「1.業務上必要な基本的な知識の獲得」、「3.仕事に直結したスキルの習得」が肯定的回答割合、平均値ともに高く、属性での差もあまりないことが分かりました。通信研修は、知識・スキル習得への期待が大きいことが再確認されました。「2.期待される役割の理解」や「4.学習に対する取り組み姿勢の向上」も肯定的回答割合が6割弱、平均値が2.6でしたが、知識・スキル習得以外での通信研修の活用方法を掘り下げていくことは今後の課題ではないかと思われます。

業績が好調な企業の特徴は ~調査全体のまとめ~

 本連載では、企業における通信研修の活用実態や具体的な活用方法について、「通信研修に関する実態調査(2012年度版)」を題材に計12回紹介いたしました。各テーマについて、単純集計に加えて、クロス集計をもとに属性ごとの状況を分析いたしました。今回は総まとめとして、現在最高売上高企業(5年前・3年前・1年前売上高<現在売上高)=業績好調企業が、通信研修実施上どのような特徴があったのかを整理して結びに変えたいと思います。

 まず、大元の人材マネジメント施策が効果的に展開されていました(2012年9月18日号)。特に、人材マネジメント施策を展開する上で、自社・自組織の方針を明示・浸透させている(2012年10月2日号)ことに加え、通信研修への取り組みも積極的で、受講率向上に向けて人材育成部門が積極的な情報提供を行っていました(2014年6月24日号)。

 次に、通信研修の活用目的は、直接的な知識・スキルの習得に加え、幅広い視野を持たせることを重視していたことが特徴的でした(2013年6月11号)。

 以上の結果を踏まえると、現在最高売上高企業(業績好調企業)の成功要因としては、方針の明示・浸透を基点とした一貫した人材マネジメント施策の展開にあるのではないかと思われます。よって、通信研修を有効に活用し、人材育成目的を達成するためには、経営者の参画を促し、方針をメッセージとして明確に伝えることが重要であると考えます。そのためには、人材育成部門が主体的に働きかけ、経営者の巻き込みと現場に対する情報提供や学習への動機づけ・支援が成功のためには必要不可欠なのではないかと思われます。

 以上で、本調査の連載を終了いたします。なお、本連載では、調査報告書すべてのテーマを取り上げておりませんので、よろしければ、調査報告書の全文ダウンロード(PDF)をご利用いただければ幸いです。