手間をかけて信頼感を得て、OJT後期に繋げる

 ここまで読んだ方は、「ティーチング」は非常に手間がかかると閉口したかもしれません。一つひとつの指導でこれを行うことは難しいと思います。新人の使う時間は、組織に貢献するためのルーティンワークが8~9割を占めます。ですので、トレーナーが新人に渡す「ティーチング」に適した経験は、ちょっと背伸びして頑張るような経験、それが仕事を覚える上で幅広い情報を扱うような経験をピックアップしてください。たとえば、少し難易度が高い業務、他者と関わる業務です。こういった経験はトレーニーとしても取り組んだ後にフィードバックを欲しがるものです。すべての業務に、というわけにはいきませんが、成長のステップやタイミングに合わせて経験とセットで指導を行ってほしいものです。

 また、「(オリエンテーション⇒)経験⇒気づき⇒フィードバック」のサイクルが回っていくと、トレーニーからの指導への信頼感も得られます。新人から信頼を得る、という言い方には違和感があるかもしれませんが、この状態が続いている、ということは「小さな成功/失敗の経験」が肯定的に積み重なっていくということを意味します。これが積み重なって本当のヤマ場のOJT後期に入るタイミングにはトレーニーとしてはかなりの難題、規模の大きな仕事にも意を決してとりかかれるようになる、ということを意味します。信頼感ができていないと「大事な経験(=チャンス)」と言われても、躊躇や尻ごみをしてしまうこともあるでしょう。

「ティーチング」はトレーナー側にも貴重な情報が得られる

 「ティーチング」はトレーニーにとっての指導の信頼感や安心感に繋がる、という話に加えて、もうひとつトレーナーにとっての良い点があります。それは、教えることを通じて、実はここまで解説したような「ティーチング」に力を入れれば入れるほど、指導者としてはトレーニーの今の実力、成長する上での課題(得意なこと/苦手なこと、向いている仕事/向いていない仕事)、本人の仕事への気持ちや姿勢、本人の可能性や伸びしろ、など、貴重な情報が得られる、ということがあります。

 言いかえると「ティーチング」はトレーナーにとっての貴重な「観察」の行為と言えます。10教えても、5、6のレベルといったようになかなかマスターできないこと、1教えて10できるようになること…そしてその時系列の変化など。トレーニーの指導に力を注げば注ぐほど、次に与えたい仕事を選定する上で貴重な情報が得られますし、またどこまで深く任せられるか?といったことの判断ができるようになってきます。