ここまでが「ティーチング」についての実践に向けた解説です。最後に、ティーチングに関して紹介できなかった内容に関して触れたいと思います。

 「ティーチング」に関わる要素として「褒め方」と「叱り方」についてよくトレーナーから質問を受けます。これについては連載の18回「OJT前半・後半の2ステップの任せ方の切替え」の後半で触れていますのでご興味ありましたらご一読ください。基本的には「褒め/叱り」だけで一冊の本ができる内容ですし、私はその道の専門家ではありません。ただ、今回の連載のコンテキストに沿って解説させていただきました。前半と後半によって少し考え方に変化を持たせて接してほしいと思います。

 トレーナーのコーチングスキルについてですが、「コーチング=傾聴」と捉えたときに、コーチングを実際に使う場面は私の感覚としてはOJTの後半の11月以降です。トレーニーの陥りがちな傾向、見えてきた強み、仕事に関する仕切り方を意識させたくなってきたころがコーチングを使う最適なタイミングです。

 もし、社内トレーナーに向けて研修などでコーチングスキルを提供することを考えている場合は、後半が良いと思います。また前半、スタート時は経験上は「仕事の教え方(教える技術)」に集中するのが理想と思います。

 OJT期間が短いというトレーナーからの意見や質問も社内外からよく受けます。業種や職種によって、育成の期間は変わってくると思うのですが、半年くらいのOJT期間で単独で取引先に出て行くケースがあります。基本的な知識や動作を受け取った後は、あとは実体験で成長するという考え方だと思うのですが、これについては少し疑問があります。

 確かに、トレーナーが同行しては一向に主体性を持って仕事を覚えない、ということは言えるかもしれませんが、一方でもし、十分な指導が受けられない場合は、この間は成長の度合いは「トレーニーの意識と努力次第」ということになってしまいます。接客や対応を聴きながら「現状の課題は?」「もっと良いやり方は?」など、聴いているだけでも、トラブルを回避させる着眼点を伝えたり、目線を上げる指導は可能だと思います。これこそ、コーチングが活きてくる指導ではないかと思います。

 今回は「ティーチング」に関して解説しました。この概念はOJT前期のような「仕事の基本動作を教える」という位置づけで紹介してきました。実はトレーナーとして教えたい大きい要素がもう一つあり、それは「トレーナーの持つ暗黙知(流儀、持論、心得)」があります。これについては、次回、5つの軸の4番目の要素「相互理解」で解説します。