仕事の難易度が上がり、関わる人が増えて、更に自分の関わり方が増すと、今までのように右から左へと関係者の確認を取ってその通りに形にする、というだけではなく、複数の関係者の意を汲み取りながら、自分なりに見極めた「落としどころ」に向かって周囲を調整しなければ仕事は収束しないはずです。

 しかしながら、トレーニーは今まではトレーナーに守られ、「報・連・相」の末に「こうしなさい」という方向性を示してもらってから動いていたため、自分の意見はそれほど出さなくとも仕事は問題なく進んでいました。ただ、この段階にくると、やはり自分で着地点をイメージしてそこに向かって他者を調整する場面が多くなってきます。

 ここで指導において「傾聴」が必要となる典型的な4つのシーンを紹介します。

(1)複数の関係者からのオーダーや意見に
自分なりの「落としどころ」を見出さなければならなくなる

 協働する関係者の輪は徐々に広がっていきますし、関わり方も深くなっているはずです。前期OJTでは、トレーナーが状況を説明しながら指示を出し、それに基づき動いていましたが、後期に入るとその調整や判断も課せられます。

 そもそもトレーニーと協働する相手はすべて自分よりも年長の人たち。取引先や先輩社員に合わせて、すべて意見を聴いてその言葉通りに動いていては、すぐに業務は立ち行かなくなるでしょう。すぐさま、「伝書鳩」「右から左へ横流し」の厳しい指摘をトレーナーや協働者から受けるはずです。

 やはり本人として時間やコスト、クライアントの意向などの仕事の重点を自分なりに見極めて判断して相手を説得し、働きかけて収束させなければなりません。そんな時期と言えるでしょう。

(2)業務の時間/品質/費用などトレードオフの要素に
自分なりに優先順位や折り合いをつけなければならなくなる

 これも調整ごとです。進めている仕事は何事も予定通りには進まないものです。当初の見極めよりも進めているうちに要件が増えて行ったり、関係者のレスポンスに時間がかかったりして仕事の推進者としては調整を余儀なくされます。

 変更によって時間的、費用的な限界が来たならば、他の制約を取り払うなどの判断が必要になります。すべて満たす、というのは結果的に多くの関係者にとって中途半端な内容になりかねません。クライアントや協働者、そもそもの仕事の重点をよく理解したうえで判断することが求められてきます。