しかしながら、新入社員であるがゆえ、トレーナーには見えない本人の壁や不安材料があるかもしれません。また、まだ対応のオプションが複数あるかもしれません。これらを自分なりに解釈し、自分の言葉で他者をリードできるためには本人の気持ちが乗っていることが重要です。質問とは言いながら、判断とこれからのアクションに対して少し背中を押す感覚で状況を整理できることが理想です。

 「傾聴」に関する具体的な姿勢、問いの投げかけの種類は以上です。OJTで重要な「傾聴」とは前にも述べたように「報・連・相」と密接に絡む要素です。確かに前期OJTと比べてはトレーナーから働きかけない(訊きにいかない)とはいうものの、トレーニーから「報・連・相」しやすい関係性を構築していることが大切です。

 今の新人は、トレーナーに対しても気遣いはしますし、トレーナーが超多忙なことはよく理解しています。困ったときに声をかけづらい、という感覚は普通は持っているでしょう。直接的に「あれ、どうなった?」という「報・連・相」を求める姿勢ではなく、こまめに「何か困ったことない?」という声をトレーナーから投げかけることの積み重ねが重要です。

 今回は5つの軸の最後の要素、「傾聴」について解説しました。OJT後期で仕事の難易度が進むなかで、「状況把握力」「判断力」「仕事の本質理解力」「行動力(他者への働きかけ)」といった課題で「傾聴」が重要です。トレーニーが成長課題をクリアするまでには一定の時間を要します。最適解はケースバイケース。経験によって力がつくものです。辛抱強く訊くことがトレーナーとして求められることになります。

 次回以降は、トレーニーの「成長課題」について解説します。引き続きよろしくお願いいたします。

 この連載の元になっている新入社員OJTを扱った書籍『「自分ごと」だと人は育つ』(博報堂大学編、日本経済新聞出版社)がおかげさまで日本の人事部が主催するHRアワードの書籍部門にて最優秀賞をいただきました(http://hr-award.jp/prize.html)。

 普段から自分が読んだりチェックしたりする書籍の中に入れてもらっただけでも嬉しかったのですが、このような限定されたテーマで最優秀賞に選んで頂けて光栄です。当初は、自分の会社あるいは業界内しか通用しない考え方、体系ではないかとも思っていたものですが、このように評価をいただけて業界を超えて役立っていることがわかり本当に嬉しく思います。

 関係者の皆様、ご支援いただいている皆様にはこの場を借りて感謝したいと思います。ありがとうございます。