松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 社長

 人事の方に女性管理職が増えない阻害要因を尋ねたとき、真っ先に挙げられる声は、「過去からの経緯で管理職候補の年代の女性社員数が少ない」というものです。しかし、女性社員の数が多ければ女性管理職が増えるのかというと、それはまた別の問題です。弊社の調査によると、女性管理職が増えない直接的な原因は女性社員のキャリア形成不足にあります。男性社員と比較して女性社員のキャリア形成が遅れているために、その年代の女性社員がいても簡単には登用できないのです。

女性だけを対象にするのは不合理で不公平?

 さらに女性のキャリア形成不足を生じさせている原因を探ると、そこには女性社員のキャリア意識の不足が起因しています。本人の管理職志向が乏しいため、みずから積極的に役割を拡大しようとしないことに加え、上司も上昇意欲の感じられない人に経験を積ませるような仕事を与えようとしないのです。そのような事情から、まず女性管理職候補のキャリア意識を高めるための研修に取り組む企業が増えています。

 しかし、女性管理職候補に対する研修への批判の声も聞かれます。「意識の乏しい人に投資をするのは合理性に欠くのではないか」という意見もありますし、既に管理職に昇格した女性からは、「私のときにはそのような研修はなかったのに甘すぎる」といった声も聞かれます。どちらももっともな意見のようにも感じられますが、その是非を判断するためには、(1)そもそも何のためにこのような研修を行うのか、という本質的な目的と、(2)なぜ女性のキャリア意識が不足しているのか、という根本的な要因の2つについて考えることが必要です。

 前者から述べると、研修などによる意識付けがなくても管理職になったという女性には、この手の研修は必要ありませんでした。男性管理職が共有する価値観にみずから同化できる女性社員には、特段の対策は必要ないのです。しかし、従来の管理職像に同化できる人ばかりが昇格しても、ダイバーシティ推進の経営上の効果は限定的です。そのような状況のままでは、いつまで経っても、社員の発想や行動様式が変わらないからです。

 したがって、現時点ではキャリア意識に欠けるかもしれないけれども、多様な価値観を持った女性社員の活躍を促してこそ、ダイバーシティ推進の意義が得られます。女性管理職候補の選抜研修は、企業が変わるために必要な投資なのであって、女性優遇策ではないと考えることが必要です。また、この施策はキャリア意識における男女差が解消されるまでの経過措置と捉えられるべきでしょう。