安藤 良治
ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタントPSマネジメントコンサルティング 代表

 職場において決まったパターンを身につける訓練型の育成(OJT)から、社員自ら主体的に学び時々に応じて柔軟に最適な行動がとれる社員を育てる学習支援型の育成(OJL=On the Job Learning)へ。このOJLの定着と実践をテーマに連載していきます。

 第1回となる今号のテーマは、成人を育てる――成人学習です。テーマについて論を進める前に「そもそも誰の何のためのOJLか?」を明らかにしておく必要がありそうです。

OJLを導入する企業のため
OJLを導入することで主体的に学習し、自ら考えて行動する社員が増えることを目的にします。ですからOJLの導入は、「企業のため」になります。

OJLにより、自ら主体的に学び、成長する社員のため
社会人として、企業人として、主体的に学び、行動することが、個々人の成長には欠かせません。当然、決まったことを決まった通りに守り行動する規範や行動を身に付けなければなりません。一方で「ここは守りか、攻めか」「ここは提携か、自主開発か」――必ずしも正解がない中での意思決定ができるようになるためには、主体的に考える習慣が欠かせません。そのためのOJLの導入です。ですからOJLは、自ら学び成長する社員のためでもあります。

 では、OJLを実践する指導者にとっては、どうでしょうか。

 毎年5月ごろになると私は、新入社員の職場指導員への研修を担当します。この指導員研修を担当し始めた数年前に、私はある失敗をしました。長年人事部門を経験していたこともあり、「職場指導員に任命されることは名誉なこと」との思いがありました。そのため、研修の受講者モデルを「モチベーションの高い社員の集まり」と設定して研修を行ったのです。ところが蓋を開けてみると、指導員として選ばれたことに名誉どころか、迷惑な顔をしている人が多くいたのです。「こんな忙しいときになんで新人の面倒を俺が見なきゃいけないのか」と嘆いている人。「自分が新人の時、先輩は何の面倒も見てくれなかった。私だって同じように新人と接すれば良い」と…。

 受講者モデルを間違えると研修での「掴み」はうまくいかないものです。その年の研修は私にとっては苦い経験となりました。有難いことに翌年以降もその企業から継続のオファーを頂戴し、現在に至っているのですが、翌年からは指導者自身にスポットを当てました。「『指導した経験』そのものが自分自身の成長に大変役立つ」ことを強調し、受講者自身の成長のための「指導員研修」を展開しました。この視点の変化が功を奏し、受講者自身が良い学びを得ようとする研修となっています。

 この経験から、「社員の一段の成長を支援する指導者のためのOJL」という視点が欠かせません。指導者を中心に置いてOJLを学ぶことが、自分自身の成長になり、結果として主体的に学ぶ社員が増え、企業の人財育成の推進力となると考えます。

 このコラムで展開する「OJLの定着と実践」も、「指導者のためのOJL」の視点で書いていきたいと思います。

 さて、初回のテーマ「成人を育てる(成人学習)」。指導する対象者が誰であるか?――受講者のモデルを正しく捉えることは大変重要です。私がかつて指導員研修で「モチベーションの高い社員の集まり」と受講者モデルを設定し、実際には指導者として任命されたことをネガティブに捉えている人が多かったために「掴み」が難しかった経験をお話ししました、このように、指導の対象となる人がどんな人であるかをモデルとして設定することが、育成プログラムの成否を決めるベースとなります。