50代からの人生は想像とは違う

 全日空グループでITビジネスを立ち上げて、意気揚々、飛ぶ鳥を落とす勢いだった30代の自分を思い起こせば、「こんな仕事漬けの生活を50歳で続けているなんて無理。50歳であくせく働いていること自体がかっこ悪い。50歳になったら引退して南の島で遊んで暮らせるようになりたい。だから今頑張って働いて貯金するんだ」なんて思いつつ、がむしゃらに働いていました。

 しかし、自分がいざ50歳になった時に、働くことをやめたいとは思いませんでした。お金が無い訳ではないけれど、毎日が日曜日なんて耐えられない、現役でいたいという思いがとても強くなっていました。また、「今の50代は昔より10年は体力的に若くて40代と同じ、まだまだやれる」なんて思っていました。しかし、55歳を境に体力の衰え、老眼、記憶力の低下と、自分の年齢を嫌というほど感じます。私自身、いざ50代に突入し、そして50代半ばを過ぎて体感することのすべてが想像とは違っていました。

 なぜ想像と違ったかといえば、それは50代の人生のお手本がいないからです。今の60代・70代の方々の人生は、私たち50代とは全く違います。

 Cさん(男性)「定年退職してから海外旅行が趣味。ヨーロッパのどの国も2回以上行っているし、アフリカも南アメリカも行っている。あとはアラスカに行くくらいかな」

 Dさん(女性)「私も年金を貯めて、年に2~3回海外旅行するのが何よりの楽しみ!」

 Eさん(女性)「うちの夫婦も年金生活、年金最高ね。私たちの両親も全員健在で6人が年金で生活しているの。でも娘や息子たち夫婦は年金なんてあてにならない世代。今も2人で働いて子育てしているけど、結構大変そう。ちょっと申し訳なく思うわ」

 今月、私が参加したゴールデンウイークを外してのクロアチア10日間の旅行。参加者は24名で、そのうち21名は60歳以上の方でした。上記は、平均年齢70歳くらいのシニア世代の会話です。皆さん、海外団体ツアーの常連で年金生活者。幸せそうに悠々自適の人生を満喫していました。これが昭和の企業戦士のゴール、企業戦士を支えた妻のゴールです。

 この人生のゴールを手に入れるはずだと信じていたのに裏切られたと感じて戸惑っているのが、今の私たち50代。働く人生の中で少なからず「バブル時代」を経験した世代です。

働くゴールがなくなり、下山が始まった!

 定年年齢が延びるどころではなく、年金受給年齢の引き上げとともに、定年にかかわらず60代は当たり前に働かなくてはならなくなってしまった人生をどう受け止めるか? 「定年になったら、退職金と年金で、好きなことをやって暮らす」という目指すゴールが突然消滅しました。必死に走ってきたマラソンで、完走まであと1キロという地点でゴールが急に消えて、走り続けるしかなくなったような感じです。

 そして、ゴールが消えただけでなく、役職も給料も上がった頂上や、その後の平坦な道では、働く人生が終わらなくなりました。働く人生に下山があるという事実です。

 50歳までに課長職になっていなければ、50歳が実質の役職定年。部長職になっている人も55歳までに事業部長、執行役員になっていなければ、55歳が役職定年。といった会社は増えています。また定年まで役職定年はなくなっても、60歳で一度退職をしたうえで、契約社員として1年更新で65歳まで働けるといった形での定年延長をしている会社も多い。会社で役員まで上り詰めたとしても通常は62歳・63歳が定年で「その後天下り……」なんて道はどこにもない。

 つまり、働いている人生において、ほぼ全員に下山が必ずやってきます。この下山に直面し、悩みながら働いている50代が増えています。