「女性の幸せなキャリア」。このタイトルカリキュラムで講演や研修を始めたのは2003年頃、気が付けば15年間も行ってきました。3年ぐらい前までは、1年に50回以上登壇していました。ここ数年は、後進のワーキングマザーの講師にバトンタッチをしてきましたが、それでも年に10回くらいは登壇します。今回はスポーツ用品メーカーの労働組合からのリクエストで講演。20名ほどの参加者の8割が20代、いずれも店舗で販売職をしている女性たちが対象でした。

 平均年齢25歳前後、仕事にも遊びにも全力投球、自分の可能性や成長を求める「肉食女子」たちに、58歳の私の話がどれだけ響くのか、ちょっとドキドキしていました。

 「昭和世代の女性たちは、人生を丸いリンゴに例えると、仕事を選ぶか、結婚して家庭に入って専業主婦をするかの2択で、頑張ってもリンゴの半分だけの充実感しか得られませんでした。でも今の時代は、リンゴ丸ごとを充実させるのが女性の幸せな人生です。だから皆さんには仕事でもどんどん成長してほしい。そして、女性としての人生も置き忘れないでほしい。丸ごと人生を味わって満喫してほしいです」

 こんな私のメッセージに皆、深くうなずいてくれています。また、「幸せなキャリア≠安定したキャリア、お気楽キャリア」「幸せなキャリア=自分のキャリアビジョンに向かって成長していくこと、変化やハードルを乗り越えられた満足感や自信」こんな話にも、しっかりついてきてくれています。

求めるのは「安定」ではない。「可能性」と「成長」を追いかける「肉食女子」たち

 参加者は4人テーブルに分かれて座っています。同じテーブルの参加者と悩みを共有する時間の場面で、彼女たちの声を拾ってみました。

 「入社4年目だけど、毎日が同じ。『安定』しているけど『マンネリ』です。仕事に新鮮さを感じられなくなっていて、気持ち的に危険な感じ。このままの私ではダメになってしまいそうで不安」

 「最近、入社の時の気持ちで働けない。自分が成長するためのキャリアパスが見えないから、キャリアビジョンを描きたくても、描けない」

 「オジサンたちみたいに『何も考えずに目の前の仕事をただ頑張る』みたいな働き方はできない。会社が、このまま何年も同じことをやることを求めるなら、耐えられない」

 一人の発言に、ほかの3人が大きくうなずいています。彼女たちは、しっかりキャリアビジョンを持って入社し、仕事をしているようです。しかし、入社時から数年たった今、自分があまり成長できていないことに、不満というよりも大きな不安を感じています。昭和時代、男性たちが「女性は定例業務、サポート業務が向いている」と定義し、そういう仕事をしている女性たちがほとんどでした。女性自身も「安定」を望んでいる人が多かった。しかし、今は男性と同様、もしかすると男性以上に仕事での自分の「可能性」「興味」を持ち、自分の「成長」を願っています。

 これをちゃんと理解して、企業は女性を育てているでしょうか? 肉食女子たちのとてつもない成長エネルギー、パワーを会社は生かしているでしょうか? 懇親会では、彼女たちの本音に直接触れることができました。

22歳に詰め寄られて絶句する昭和世代の男性上司たち

 Aさん:「私が仕事でこんなことをやりたいと、上司たち(45歳以上の男性)にいろいろな提案した時に、『現状維持でいい』的なことを言われて、思わず『あなたはいったい何がやりたくてこの会社に入ったんですか? あなたの夢はなんですか?』と詰め寄ったら、すごい困った顔してうつむいて無言になっちゃったんですよね。今日の先生の講演を聴いて、なぜ上司たちが無言になってしまったかが分かりました。彼らは「キャリアビジョン」を持たずに、兵隊として昭和時代から働いていたんですね。私は一番キツイ質問をしちゃったんですね。かわいそうなことをしました(笑)」

 これは22歳、入社2年目の女性の発言です。さすがスポーツ用品メーカーだけあって、参加した女性たちは体育会系のスポーツウーマンが多い。肉食系女子のなかでもそのたくましさは群を抜くかもしれません。しかも、しっかりしたキャリアビジョン、つまり仕事を通じて実現したい夢や目標を持って、会社に入社してきています。

 入社2年目、現場の一通りの仕事を覚え、だからこそ自分のキャリアビジョンを仕事のなかで実現したいと、希望に胸を膨らませている彼女のエネルギーレベルは、私から見てもとても高く、キラキラしています。しかし、残念ながら彼女の上司たちには、キャリアビジョンがなく、日々の仕事の後の「飲みにケーション」が唯一の楽しみという働き方のようで、このコミュニケーション・ギャップはものすごく大きいようです。