女性活躍推進法の施行で、女性管理職比率を宣言した会社は非常に多くなりました。宣言したからにはやらなきゃまずいということで、今年は今までやっていなかった企業が女性管理職や女性リーダー育成の企業内研修に慌てて取り組みだしたり、公開セミナーへ女性たちをどんどん送り込んだりしています。会社としては一生懸命に女性リーダーを育成しているつもり、また彼女たちの上司も自分の女性部下を忙しい中で研修に出して、ちゃんと成長させているのだと思い込んでいるようですが、彼女たちにかけている言葉、彼女たちの感じている気持ちを見れば、ちょっとピントがずれていることが分かります。2日間の研修を終えての彼女たちの表情は変わりました。
・男性の期待する男性のように働くのではなく「自然体」でいいと分かり、肩の力が抜けた
・心が軽くなって、すっきりした
・女子力、母性が開いた女性リーダーになりたいと思った
・社内の女性・後輩へ勉強になった所を教えてあげいと思う

 優しい笑顔になって、互いに声をかけあいながら帰っていく彼女たちには、初日の朝の気負いは全くなく、自然体の女性リーダーとして輝いていました。彼女たちがそのまま会社で仕事をできれば、まさにロールモデルでしょう。

研修に送り出す上司の意識に大きな差がある

 翌週の企業研修での女性リーダー・エンカレッジコースは、満員御礼の定員をちょっとはみ出す33名の参加でした。こちらの企業は男性9割、女性1割という会社です。2年前に男性経営陣・管理職に対して、私を講師で呼び「女性が拓く会社の未来〜カギを握るのは男性上司〜」という半日講演研修を全国で10回くらい開催しました。女性部下を成長させられなければ、男性部下も成長しない。逆に女性部下を成長させられる上司は、すべての部下と信頼関係を育み成長させられるという重要なポイントを多くの男性管理職が気づき、自分ごととして感じてくれたようです。そのため、女性リーダー・エンカレッジ2日間研修に対して「うちの部署の女性部下をぜひ参加させたい!」という男性管理職が増えているようです。これは、とてもよい傾向です。

 昭和育ちの45歳以上の企業戦士的な男性管理職の中には、「研修なんて行くやつは暇なヤツ、仕事が優先!」と考えている人がいます。そういう上司の下で働く部下は男性でも女性でも、研修やセミナー受講中も上司からメールや電話がかかってきて、その対応に追われています。セミナー受講後に報告書などを上げさせても、部下が何を学んできたかにも全く興味を持ちません。そんな上司の下では、部下が気づき、変わりたくても、成長したくてもうまくはいきません。そういう意味で、部下が研修に行くことを上司が前向きに送り出しているかどうかで、研修に参加する女性たちの気持ちも大きく違ってきます。

 研修で、朝から素敵な笑顔で周りと話している女性がいました。ランチタイムの時に、彼女を中心に会話が始まりました。

「今回の研修は上司の勧めです。研修のために私が初めて京都に行くことを知った上司は、研修会場に近いホテルを見つけてくれて、前日の日曜日から行くなら、観光バスで半日観光しておいでと、いろいろ心配してくれました。先週末に研修を楽しんでおいでと送り出してもらって、本当に楽しみにしてきました!」

 彼女の言葉に対して、同じように上司に送り出された女性たちは「私もおんなじ!」と大きくうなずきました。

 しかし、一方で彼女の言葉に「うそでしょう。羨ましい!」と驚いている女性たちもいました。

「私も上司の勧めで来たけど、メールの転送で、『こんな研修あるけど行く? 行きたいなら行ってもいいけど?』と書いてありました。私は行きたいというわけでもないので、行きませんと返事をしたら、メールにCCされていた部長が飛んできて『なんで参加しないの? 理由が何かあるの? うちの部門の参加枠があるのだから、理由がないならぜひとも行ってほしい。うちだけ人数割れするのは困るよ。お願いだから行ってくれ』と言われて、参加しました。だから実は全く期待はしてなかったんですけど、午前中だけで来てよかったと思いました。楽しいです」

 この言葉に、私の上司も同じとうなずく女性たちもいました。

 今、女性活躍推進の中で、管理職には部下の女性を成長させてリーダーとして育成することが求められています。45歳以上の男性管理職を見ると、本気で女性部下の成長、管理職になることを応援している方が増えています。しかしながら、なんで女性を管理職に育成しなければいけないのかと戸惑いながらも、数値目標が設定されて自分の部下の女性が候補となり、何もしなければ自分の評価が下がってしまうと焦って、何かしらやっておかなくてはという方がかなり多いというのが実態です。

 そういう“とりあえず”な男性管理職は、公開セミナーや社内研修に女性部下を行かせて、実績を作ろうとします。でも本音ではどうでもいいと思っています。だから、メールの転送などで済ます。また、女性部下が行く気がなければ「私は本人に伝えたけど、行きたがらないから仕方がない」という報告で終わらせます。しかし、その部署の部門長にしてみたら自分の部門だけ女性管理職比率が上がらないことは会社の数値目標を達成できなくなるので、焦って女性部下に直接、研修に行くようにお願いする。何とも情けない姿です。

 多くの企業が女性管理職育成に取り組むために女性の研修を私に依頼してきますが、私は彼女たちの上司である男性管理職の意識改革を先にやりましょうということをまず伝えます。なぜなら、女性たちがせっかく成長して頑張ろうという気持ちになっても、その上司が彼女たちの応援団でなければ、というよりも彼女たちの成長を阻むような意識であっては彼女たちの成長はあり得ないからです。