「おまえはいいよな、定年なんてないんだろう。働きたければ何歳までもずっと同じように働けるんだろう」

 2年ぶりに開催された中学校の同窓会で、男性たちから何度も同じ言葉をかけられました。皆、ちょっと寂しげな微妙な表情です。講師としての仕事上、研修や講演受講生で50代後半の方々から話を聴くことはたくさんあります。ただ、それは受講生と講師という関係性での会話です。同窓会は、まさに幼なじみ同士だから話せる58歳のリアルな本音です。

 2年前の同窓会、私たちは56歳でした。ちょうど役職定年前後の時期だったので、男性たちの中にはモチベーションが下がっている人もいる一方で、現役でバリバリだという感じの人もいました。しかし、今回は役職定年どころかほとんど全員が60歳定年のカウントダウンという状況です。

 「何言っているのよ。私は38歳で起業して20年間、無給休暇はいくらでも取れるけど、有給休暇なしの生活をしてきたのよ。今も同じで、2年後、3年後、必要とされてなければ仕事はゼロになってしまうのよ」

 私の返事は、彼らの耳にあまり入らないようです。

 「でも、きみは相変わらず忙しく全国飛び回っているんだろう。60歳過ぎてもきっと同じだよ。それに楽しそうに働いているし、いいよな……」

 確かに充実した仕事人生を送っているかもしれません。そして、できる限り働き続けたいと思っていることも事実です。

男性は60歳以降をどう生きるのか? あわてて趣味探し!

 「5年間の転勤からようやく戻ってきました。あと2年で定年です。妻は僕より5歳年下で働く気満々なので、『目指せ!妻の扶養家族』です。そのために、今から家事手伝いを頑張っています(笑)」

 とある同窓生の近況報告に「うらやましい」という声も上がりました。彼は、有名大企業に入社し転勤を繰り返しながら、「会社命、仕事命」で働いてきました。子供2人も成人し、定年退職後は奥さんに働いてもらって、自分はのんびりとしたいようです。私と同世代の男性はそのほとんどが、20代からずっと昭和の企業戦士的な働き方を続けてきました。何も考えずに会社の命令のままに頑張って、働き続けて、疲れ果てつつあります。60歳の定年を前に、燃え尽き寸前の感覚で「お役御免になりたい」という気持ちが強いのです。

 「定年になったら、四国のお遍路参りを頑張ろうと思います」

 「日本画を習い始めたら、妻が驚いています」

 「昨年から陶芸にはまっています。ずいぶん作りました」

 こうした男性たちの近況報告にも盛り上がっています。定年したら趣味に生きる……というよりも、やることがないからあわてて趣味を探して、人生の大切な時間を潰そうとしています。彼らの話の中に、社会貢献や、ボランティア活動といった話は残念ながら出てきませんでした。自分を犠牲にして仕事人生を全うしたのだから、60歳からは自分の楽しみのためだけに生きていきたいのでしょう。実は、この同窓会が2年ごとに開かれるようになったのは50代以後で、積極的にやりたがっているのは男性たちです。2次会に行こう行こうと盛り上がり、もっと連絡を取り合おうと盛り上がる同級生の男性たちには、世の中の会社で勤めている58歳の男性の姿が映し出されていました。