2019年11月26日、ベルサール東京日本橋において「日経BPダイバーシティトップセミナー2019(主催:日経BPマーケティング・日経BP総研)」が開催された。働き方改革関連法施行から半年あまり、これまで女性活躍推進がメインだった日本のダイバーシティは新たな局面を迎えている。本セミナーでは元カルビー代表取締役会長兼CEOの松本晃氏による基調講演、青山学院大学経営学部経営学科教授山本寛氏の特別講演、そして後半ではKDDI理事コーポレート統括本部人事本部長白岩徹氏をお招きし、経営者視点の人事戦略をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。
(取材・文=林達哉、撮影=竹井俊晴)

「生き方改革」を停滞脱却の糸口に

 「日本人、男、シニア、有名大卒、そんな人たちだけでやっていけますか?」をテーマに登壇された元カルビー会長兼CEOの松本晃氏。強いリーダーシップで変革を率いてきた実績を踏まえ、現代の日本企業が抱える課題と、解決に向けた取り組みを紹介した。

 冒頭で「日本の働き方改革、ダイバーシティはうまくいっていない」と断じた同氏は、その理由として高度成長期に作られた様々な社会の制度や仕組みが、今も変わらず存在していることを指摘。平成の30年間で停滞し、大きく競争力を落とした日本の現状に強い危機感を示し、「人生最初の20年は勉強して、40年は仕事、10年は余生を楽しむ――。そんな常識は、今では通用しないことを認識するのが第一」と述べた。

元カルビー代表取締役会長兼CEO 松本晃氏
京都大学大学院修了後、1972年伊藤忠商事入社。1986年よりセンチュリーメディカルに出向。1993年より現・ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じて、社長、最高顧問を歴任。2009年からカルビー会長 兼CEO。2018年6月よりRIZAPグループの経営に参画。2019年6月にラディクールジャパン株式会社を設立し、代表取締役会長CEOに就任。

 2009年にカルビー会長就任後、同氏は先頭に立って変革に着手した。その根底には「人は何のために働くのか?」というテーマがある。「顧客・取引先、従業員とその家族、コミュニティー、そして株主など、仕事に関係するすべての人を幸せにすることが働く目的なのです」(松本氏)。子育て中の女性幹部には16時退社を命じ、本社をワンフロア・フリーアドレスにして社員間のコミュニケーションを推進し、在宅勤務制度を導入したのも、すべては「働く=人を幸せにする」という考えに基づくものだ。

 ダイバーシティを推進するうえでの障壁として同氏は「トップの認識不足」を指摘した。経営戦略を重視していながら、いまだにダイバーシティを優先して考えられない経営者が多いと言う。「異物が入れば不快になるのは当然だが、それを“変えよう”という強い意志を持たなければ、(会社は)いつまでたっても変わらない」と同氏は語る。

 現在の働き方改革に欠けている要素は「生き方」の捉え方にある、と同氏は述べる。「会社とは本来、魅力的な人間を育てるところ。それなのに今の会社は人を酷使してボロボロにする場になっている。仕事のあらゆる無駄を省き、家族との関係性を深めたり教養を高める時間を作れば生き方が変わり、未来が見えてくるはずです」(松本氏)。講演では最後に、吉田松陰が遺した「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、故に夢なき者に成功なし」という言葉を紹介し、「生き方改革」の必要性を強調した。