大川氏は、「SDGsは世界共通の目標だが、それほど大きなものと考える必要はない。大切なのは身の回りの小さな問題を解決していくこと」だと言う。自分にとって身近なことが、実は世界につながっている。そう考えることが面白いと大川氏は学生たちに語りかける。

 日本政府は、2017年11月に「SDGsアクションプラン2018」を発表し、日本のSDGsモデルの特徴は3つ、すなわち「ソサエティ5.0との連動」「地方創生」「次世代の人たちや女性のエンパワーメント」とした。一方、民間企業の側も、2018年に日本経団連の「企業行動憲章」にSDGsの項目が加えられたこともあり、SDGsへの取り組みが活発になっている。

 では、大川印刷はSDGsにどのように取り組んでいるのだろうか。

不平等をなくす場としてのオリンピック

 大川印刷が掲げているのは「環境印刷」というキーワードである。「再生可能エネルギー100%印刷プロジェクト」では、社屋に設置した太陽光パネルによって使用電力の20%をまかない、残る8割は再生可能エネルギーを組み合わせる。また、社内照明ではLEDを利用し、従来から消費電力を7割削減。そして、使用インクの7割弱に石油を含まないインクを使用するなど国内印刷業界で初めて、社内での印刷物の印刷・輸送・営業に関わる年間CO2排出量をすべてオフセット。全くCO2負荷のかからない「CO2ゼロ印刷」を実現した。これが「環境印刷」の具体的な内容である。このような取り組みによって、環境意識の高い外資系企業の指定印刷会社になるなど、同社の企業利益にも確実につながっていると大川氏は言う。

 「正しい方法によって稼ぐ。それが企業にとってのSDGsへの取り組みであるといえると思います」

 SDGsは、オリンピック・パラリンピックの理念ともつながっている。大川氏が紹介したのは、1994年にノルウェーで開催されたリレハンメル冬季オリンピックの例だ。同国で長い間迫害されてきた少数民族のサーミ人が、五輪開会式で民族衣装を身にまとって、禁じられてきた民族の歌を歌ったところ、世界中のオーディエンスが絶賛したという。

 SDGsが掲げる17の目標の中には「人と国の不平等をなくす」という項目がある。オリンピック・パラリンピックにはその目標を達成する力があると大川氏は話す。

 第1部では、大川氏の講演を踏まえて、学生が参加するワークショップを実施した。大川氏がリードする「ワールドカフェ」スタイルのワークショップが始まった。

 ワールドカフェは、オープンな雰囲気の中で自由に意見を出し合うことを目指すディスカッションの形式だ。数人からなるチームをいくつかつくり、そのメンバーをシャッフルしていくことで意見を全体に還流させていく点に特徴がある。

 この日のワークショップでは、6人程度のチームが6つのテーブルに分かれて、2020東京大会でどのようなSDGs達成の取り組みが可能であり、またこの大会を通じて社会にどのようなインパクトを与えることができるかについて話し合われた。

学生たちのアイデアがSDGs17のテーマにどう結びついていくかを考える
ワールドカフェ形式で活発なやり取りが飛びかう