失敗してもチャレンジする人を評価

松丘:パフォーマンスの向上につなげるためには何が必要と考えられましたか?

佐藤:昔の目標設定では、年の初めに立てた目標を1年間踏襲して、中間で1回見直しをするくらいでした。以前はそのやり方でも、ビジネス上それほど大きな問題が出ているという声は上がっていませんでした。けれども、最近のビジネス環境は本当に変化が激しく、先の見通しを立てることは困難です。そこで、その時々の状況に合わせて自主的に動けるような従業員になってもらいたい、上からの指示が来るのを待ってそれに合わせた仕事をするのではなく、大きなビジネスの流れを自分事として捉えながら、会社に貢献するために何をしなければならないのかを意識する働き方に変わってほしいと。そういう働き方の変革という意味合いが根底にあります。

松丘:新しいことにチャレンジすると当然、失敗はありますが、失敗すると評価が下がる仕組みのもとではリスクを取ろうとする意欲もわかないですよね。

佐藤:最初、このGPSを導入した時に、失敗から学ぶということが重要ですよと話しをしたら、日本人には難しいという反応がありました。いかに失敗を防ぐように管理するかが良いマネジメントであるという認識があったからです。そこは考え方を変え、失敗しないように働く人より、失敗してもいいからチャレンジする、何か新しいことをやってみる人を評価していきましょうと訴えました。マネジャーが考え方を変えていかないと従業員の意識も変わっていきません。失敗してもそこから学ぶことが優先されることをマネジャーから発信するようにお願いしました。それによって、少しずつ考え方が定着してきました。

生産性の高い働き方とは

松丘:そうなると、マンスリータッチベースでの各人の目標設定が重要ですね。

佐藤:一人ひとりが従来の仕事のやり方を踏襲するのではなく、いかに少ない時間で効果のある働き方ができるようになるかを考えて仕事をすることが求められます。この効果のある働き方という考え方が浸透してきて、時間をかければかけるほどアウトプットが増えるというような働き方をしている人は、今ではほとんどいなくなりました。そもそも会社の目標に対して、自分が何をしなければならないのかを考えていなければ目標設定はできません。時間で測るのではなく会社へのインパクト、アウトプットという観点から自分が何をもたらしたのかという意識を持ってもらって、そこに対して評価を行っていくという方向にシフトしています。

松丘:いかに短い時間でより大きなインパクトを実現できるかという命題については、ほとんどの日本の企業にも必要とされています。そういう働き方に変えていくために、具体的にはどのような施策が行われているのでしょうか?

佐藤:ソーシャルラーニングというのを定期的に実施しています。GPSによって求められていることは何なのか、どのようなパフォーマンスフィードバックを行っていく必要があるかといったテーマで、部門のマネジャーたちに集まってもらい、経験や考え方を共有してもらっています。そういう話をしていく中で、参加者たちの理解のすり合わせができてきて、働き方に関する対話を持てるようになってきました。どういう働き方が生産性の高い働き方なのかという認識が共有できてきたのは大きな成果です。