松丘:働き方の改革というとすぐに在宅勤務がどうだとか、ハウツーみたいなところに話が行ってしまいますが、そうではなくて、そもそも生産性の高い働き方とは何かという本質的なテーマについて話し合われているのですね。

佐藤:そうなんです。一人ひとりのミッションが分かるような組織になってくれば、お互いに信頼関係ができてきます。たとえオフィスの隣の席で仕事をしている姿が見えなかったとしても、あの人は自分のミッションのために、どこかできちんとやってくれているんだと思えるようになるのです。皆で情報共有したり、お互いが必要なことを与えあったりしている信頼関係ができてくると、どこでいつ働こうが、そういうことに関して気にならなくなってきます。

松丘:仕事の生産性についての考え方が合っていないと、働いている時間が短いとかいった議論になりがちですね。

佐藤:ちょうどお子さんが生まれて、9時から6時まで会社にいることができない人がいます。こういう話し合いができていると、その人の働き方について違う見方ができてきます。たとえ4時で帰らなければならない状況の人であっても、その人の仕事を2時間分減らさなければならないという話にならないんです。この人は4時で帰ったとしても、工夫をこらして作業効率を上げ、短い時間でも以前と同じ仕事をしてくれるという発想につながっていると思います。とにかくアウトプットは出してもらうという期待値のもとに、どう時間を使うかはその人に任せましょうと、そういう考え方をするようになってきています。

ポジティブフィードバックが効果的

松丘:マンスリータッチベースでは、マネジャーの対話力が求められますね。

佐藤:最初の頃は、どこから話せばよいか分からないという状況でした。そのため導入時には、どういうことに対して人は恐れを感じたり、ネガティブな気持ちを持ったりするのかを理解するところから始めました。とにかく毎月会うことが嫌な経験だと思われないような配慮が必要だったのです。

SCARFモデルといわれる考え方があって、自分が不利に取り扱われているとか、低い扱いをされていると感じると人はネガティブに感じたり、状況に恐れを感じたりしてしまいます。それをまず理解して、マンスリータッチベースを設定する時の状況や、マネジャーのコミュニケーションの取り方を意識しながら、一人ひとりの従業員が安心して自分のパフォーマンスについて上司と話せるような環境を作っていってください、というところからのスタートでした。
※SCARF(Status:地位、Certainty:確実性、Autonomy:自律性、Relatedness:関係性、Fairness:公平性。これらが損なわれると人は恐れを感じるという理論)

恐れを感じさせないような切り口として、3つの質問の仕方をガイドラインとして提供しました。とてもシンプルで、何がうまくいきましたか? 何がうまくいきませんでしたか? より良く仕事ができるようになるために次回はどのようなことをしますか? ということを従業員に考えさせる聞き方です。自分を振り返ってもらうことを切り口にして話しをしてもらうことにしました。ただ、最初はそれだけで会話が終わってしまうことも少なくありませんでした。