部下の「人事評価」でなく「人材育成」を重んじる

 「上司の行動によって、タテのコミュニケーションを改革する方法は3つあります。1つ目は、業務アサインを通じて、業務の分担ではなく『経験のマネジメント』をすること。2つ目は、飲みニケーションではなく、上司と部下の『個別面談』を行うこと。3つ目は、指示や報・連・相ではなく『フィードバック』を行うことです」(永禮氏)。

 「『経験のマネジメント』では、人を育てる『育成経験』、他部署と連携して仕事をする『連携経験』、そしてイノベーションを起こす『変革経験』を、業務アサインを通じて、上司が部下にいかに体験させていくか。特に、連携経験と変革経験は上司と部下の間で引き継がれていくことが研究で分かっています。企業も、意識して多くの社員をアサインしないと、一部の人しか経験ができない偏りが起き、会社の業績に貢献する社員が育たなくなります」(永禮氏)。

「業績目標と競争」でなく「希望と安心」で組織を動かす

 ヨコのコミュニケーション改革では、組織を孤立した社員が時間を切り売りする無味乾燥な「仕事場」ではなく、チームで協働していける「コミュニティー」へと変えていく必要がある。

 「ヨコのコミュニケーションを改革する方法も3つ挙げられます。1つ目は、自社の歴史と未来を示す『物語』を明らかにすること。2つ目は社員の大半が『ワンチーム意識』を持つこと。3つ目が、組織のパフォーマンスを高めるのは競争やルールではなく、『安心と信頼』であると自覚することです」(永禮氏)。

 「『安心と信頼』がある組織とは、本音が言い合える職場です。これは、グーグルが社内の180のチームを対象に実施した、アリストテレスプロジェクトで実証されています。チームの業績を高める鍵は、本音が率直に言い合える『心理的安全』があること、メンバー相互の信頼関係があること、組織構造と境界が明快であること、自らの仕事に意義を感じていること、そして仕事の重要性が高いことの5つでした。グーグルの調査から、これらが最も重要な要因だと分かったのです」(永禮氏)。

株式会社エレクセ・パートナーズ 代表取締役永禮弘之氏
株式会社エレクセ・パートナーズ 代表取締役永禮弘之氏の基調講演