急ピッチで広がる「働き方改革」。コロナショックで、その動きはさらに加速中だ。けれど、時短推進と業績向上はどうすれば両立できるのか。対応に悩む社長は多い。その解決法を紹介するシリーズの第3回目は、吉村甘露堂(福井県大野市)を取り上げる。効率化を進めるために、あえて手作業に戻したというユニークな事例である。

吉村甘露堂の吉村社長
(撮影:おおさきこーへい)

 残業を減らしたいが、人は増やせないという場合、一人当たりの生産性を向上させるしかない。そんな時頭に浮かぶのが、IT(情報技術)化や自動化だろう。しかし、福井県大野市の米菓メーカー、吉村甘露堂では、逆転の発想でアナログに回帰した。自動化をやめて手作業を増やすことで、生産性を向上させている。

好きな味が入っていない

 「この味が大好きで買ったのに、一袋に一つも入っていなかった」。数年前、商品を購入したお客から1枚のハガキが届いたことが生産性改革の始まりだった。

 吉村甘露堂は1929年の創業で、吉村文雄社長は4代目だ。看板商品の一つが、いろいろな味のおかきやあられが楽しめる詰め合わせパックだ。

 ただし、数種類を均等に同じ数だけ入れることは難しい。機械にできるのは、指定の重量分を入れることだけ。どの味を何個入れるといった細かな調整はできない。これは大手中小に限らず、どこのメーカーでもほぼ同じ状況だ。

 これが冒頭のクレームにつながった。袋の裏に「自動計量のため、内容にはばらつきがあります」と記載しており、「個数が違っても仕方がないと考えてきたが、言われてみればその通りだと思った」

 吉村社長はこの時ひらめいた。「これからは個別のニーズにいかに応えるかが重要になるかもしれない。『この味とこの味だけ食べたい』『一袋でいろいろな味を楽しみたい』といった顧客の要望に応じられるようにしよう」

 ただ、大がかりな設備投資はできない。思いついたのが、人海戦術だった。「消費者の要望にこまやかに対応できるのは人間の手作業以外にない。時代に逆行しているようだが、これが最適な方法だと思った」と吉村社長は話す。

 これまでは例えば7種類であれば、それぞれ7つの段ボール箱に入った米菓を、大きな台の上にいったん全種類開けて、手で混ぜ合わせてから袋詰めの機械に投入。袋のサイズに合わせて計量し、パック詰めしていた。

 それを人が手詰めするスタイルに変更したらどうか。従業員が製造ラインに沿うように縦に並び、Aさんは昆布あられを4個、Bさんはサラダあられを4個……といった具合に入れていき、最後に袋の封をして完成させる。