――マネジメント・イノベーションとは、どのようなものでしょうか。

ピーダーセン:イノベーションは、技術、製品、事業の変革に限りません。実は最も大きな効果をもたらすのは、組織運営の変革です。これをマネジメント・イノベーションと呼んでいます。

 20世紀、日本では世界に知られるマネジメント・イノベーションがいくつも起きています。2つの具体例を挙げると、「終身雇用を前提とした日本企業の運営・発展モデル」と、「現場における品質経営の徹底」があります。後者は、国際用語にもなった「カイゼン」として世界に広く知られています。これらは、護送船団方式の時代において日本企業の強さの源泉でもありました。しかしその弊害として、年功序列による組織の硬直化と、創造性や革新性がそぎ落とされる組織文化が生まれたことも否定できません。21世紀のグローバル市場において求められることは、日本的組織運営の良さを残しつつも、時代にふさわしい「次なるマネジメント・イノベーション」だと思います。ここで、立ち往生している企業が多いと感じます。

強い組織に見られる3つの共通点とは

――今、日本の組織が抱えている最大の問題は何でしょうか。

ピーダーセン:日本の組織の危機的状況を如実に物語っているのが、米ギャラップの「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」です。

 2017年の調査結果では、日本の「熱意あふれる社員(Engaged)」の割合がわずか6%で、139カ国中132位。米国は32%、世界平均は15%ですから、日本の数字がいかに低いかが分かります。その一方で、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員(Actively Disengaged)」は24%と他国より多く、両者の中間に位置する「やる気のない社員(Not Engaged)」は70%で最上位レベルです。これでは、「アクションを起こそう」と言ったところで、社員には響きません。

――「熱意あふれる社員」を増やし、組織を強くしていくには、何が必要でしょうか。

ピーダーセン:強い組織に見られる共通項として、次の3つが挙げられます(下図)。これらは組織として目指すべき理想像ともいえます。一つずつ見ていきましょう。

マネジメント・イノベーションの実践で目指す「これからの企業像」(ピーダーセン氏提供)

(1)Purpose-driven(パーパスドリブン)

 「Purpose-driven(パーパスドリブン)」は、中期経営計画に掲げる数字などのミッションだけでなく、それを超えた企業の存在意義や理念の積極活用に基づいた経営を指します。誠実な経営をもとに上下の信頼関係が厚いことが特徴で、パーパスドリブンな企業はいくつも恩恵を受けます。総じてそれをROI=Return on Integrityと表現していますが、理念を実際に行動に移していたり、誠実性をもとに組織運営をしていたりすることは、社員に深い動機付けを与え組織全体に一体感や団結力をもたらします。社員の自己実現を図り、イノベーションにつながる内発的な動機も生まれます。上下の信頼関係が薄く使命感を感じない組織では、将来ビジョンを掲げてもしらけるだけで、何も始まりません。