若手社員への能力開発ニーズの動向

 では、組織はどのようにして若手社員の能力開発を図ろうとしているのでしょうか。前述の調査の中に、「若手社員の能力開発ニーズ」のデータがあります(図2)。

図2 若手層の能力開発ニーズ

 まず着目すべきはダントツ1位の「コミュニケーション力」です。そして、前回調査(2010年)からの経年変化という観点では「自社の理念や価値観に関する知識」「時間を管理する力」についての能力開発ニーズが拡大しています。これらの項目について、各社の取り組みや問題意識を見ていきましょう。

①「コミュニケーション力」

 コミュニケーション力向上については各社様々な取り組みを行っています。また新入社員の「プレゼンテーション能力」や「グループディスカッションの進め方」は年々レベルアップしているように思います。おそらく学生時代に授業や研究、就職活動の場面で、実践経験がある方が増えてきているのでしょう。

 むしろ問題視されているのはスキルよりも「自らコミュニケーションを取ろうとする(発信する)姿勢や意思面」です。人材開発担当者からは、コミュニケーションに対する姿勢が受身であり、「指示待ちになる」「上司・先輩から声をかけないと報告しない」「他部署やベテラン社員との交流をしようとしない」などといった課題を耳にします。

②「自社の理念や価値観に関する知識」

 経営理念やミッション&ビジョン、フィロソフィ、クレド、ウェイなどといった形で自社の価値観を明文化し、共有・浸透させる取り組みが多く行われています。社長講話や映像による創業ストーリーの視聴、あるいは従業員を一堂に会し、ワールド・カフェなどといった対話手法を用いて、理念やミッションなどに紐づくエピソードを共有する企業も増えています。持ち運び可能なサイズで理念に関する冊子を作り、研修前に唱和する風景も多く見受けられます。自社の理念や価値観を、いかに日頃の仕事とのつながりを実感させるかが、大きなテーマになっています。

③「時間を管理する力」

 研修後の講師所感として、「演習の進行管理の実施や、納期意識を高めることが課題です」とお伝えする機会が増えているような実感があります。携帯電話の普及もあってか、最近では待ち合わせをする際に、集合時間を設定しないこともよくあると聞きます。いつでもどこでも連絡が取れるコミュニケーション環境に育っていることで、時間を守る意識が希薄になっているのかもしれません。時間を守ること自体も重要ですが、そもそも守らなければいけないという意識が低く「ちょっとくらい過ぎても大丈夫だろう」という捉え方をしているようにも思えます。

 今回は、本学の調査結果をもとに、「階層別のモチベーション状況」と「若手社員の能力開発ニーズ」の実態について見てきました。次回は若手社員をどのような育成・教育機会によって、一人前の社員に育てていくか。いかにして若手社員の「本領発揮」を支援するかについて考えていきます。

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学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 研究員
人事・コミュニケーション研究センター所属

岩元 宏輔(いわもと・こうすけ)
慶應義塾大学文学部卒業。大手流通企業の店舗運営・スタッフ育成業務に従事した後、大手人材紹介会社の教育部門にて研修講師および各種教育プログラム開発などに携わる。2011年学校法人産業能率大学に入職。ヒューマンスキルを中心とした研修の企画・実施を行う。特にコーチング・ファシリテーション・対話(ダイアログ)をベースにしたワークショップ型研修や新入社員研修、若手・中堅社員向け研修講師として活動。著書に「聞く力を磨く」(文部科学省認定社会通信教育講座テキスト)がある。