急ピッチで広がる「働き方改革」。コロナショックで、その動きはさらに加速中だ。けれど、時短推進と業績向上はどうすれば両立できるのか。対応に悩む社長は多い。その解決法を紹介するシリーズの第5回は、本田商店(島根県雲南市)を取り上げる。早退しても読書感想文を出せば、給料を満額支払う仕組みで成果を上げている事例である。

本田商店の本田社長は生産性向上に力を入れる
(撮影:伊東昌信)

 「数年前までは、残業代が欲しいからと長時間働く人が従業員の半分ほどいた。それが今では従業員一人当たりの年間残業時間はわずか1時間に減り、年間の有給休暇取得も12日を実現している」

 地元の名物である出雲そばを製造する本田商店(島根県雲南市)の本田繁社長はこう話す。

 同社の製造部門は従業員が3交代で勤務し、24時間稼働している。2年ほど前には、従業員一人当たりの残業が年間150時間以上あったから、大きな変化だ。

従業員の幸せを考えた

 本田社長は食品メーカーに勤務後、家業である本田商店に戻って2013年から社長を務める。

 「少し不純だったかもしれないが、家業を継ぐならお金を潤沢に使えて、休みが取れる会社にしたいと思った。よく考えれば、それは従業員も同じ。本当は身を粉にして働くより、『給料が多くて休める会社がいい』と思っているはずだと考えて働き方を見直し始めた」

 給料を上げ、休みを増やすためには、生産性の向上が欠かせない。その具体的な方法を考えあぐねていた本田社長は、現場に入って従業員の働き方を観察し続けた。そして残業をしても従業員の能率は落ちるばかりだと気づいた。朝からのシフトで働く人は昼までが生産性のピークで、夕方になると疲れてくる。仕事のミスが起こるのも夕方に集中していた。

 「残業をしない方が一人当たりの生産性は上がるのではないか。人手が足りない仕事があれば生産性向上で増えた利益で新たに人を採用できると発想を改めた」

 「給料が多くて休める会社」をつくるには、とにかく先に休める会社にすること。そうすれば生産性が上がり、社員の給料を増やせると考えたのだ。