コロナショックを機に働き方を一新する会社が急増しそうだ。効率的な働き方とはどのようなものか。時短推進と業績向上は両立できるのか。シリーズ最終回は、『時短の科学』の著書がある、生産性向上のプロ、一般社団法人サービス産業革新推進機構の内藤耕代表理事からのメッセージだ。

内藤耕(ないとう・こう)
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職

 一つ、問題を出します。飲食店をイメージしてください。生産性向上のためには、洗って繰り返し使えるリサイクル箸を使うべきでしょうか。それとも割り箸の方がいいでしょうか。

 「洗う手間まで考えたら、割り箸の方が安上がりだ」と思うかもしれません。しかし一概にそうとは言えない。恐らく箸は単体ではなく、いろいろな食器と一緒に洗っているはずです。だからリサイクル箸にしても、作業時間が特別増えるとは思えません。

 また、こんな視点もあります。割り箸を、食べ残しと一緒にポンとごみ袋に捨てたとします。いっぱいになったごみ袋を持ち上げた時に、割り箸がごみ袋に突き刺さって穴が開き、汁が垂れて床が汚れることがあります。そうなると掃除に時間がかかる。放っておくと不衛生だし、従業員が滑ってケガをするかもしれません。

 ただ、すべてのやり方には一長一短があり、どちらが正しいかはケース・バイ・ケースです。唯一言えるのは、仕事の流れ全体を想像してどちらを選ぶかを決める必要があるということです。

 サービス業の場合、売り手と買い手が対面しているので、生産と消費が同時に発生します。お客がいない時の生産活動を改善して、どんなに短時間にしたところで、従業員の「手待ち時間」が増えるだけです。

 だから一つの作業だけを見直して「従業員の作業時間が短縮できた」と喜んでもダメ。問題の解決になりません。仕事のプロセス全体で見ないといけないのです。

あるべき姿を追う

 では現場の生産性向上をどう考えればいいのか。シンプルに言えば、私は「あるべき姿」を追い続けることだと思っています。旅館なら、やはりスタッフは笑顔の方がいいし、部屋はきれいな方がいい。もし今、それができていないなら、できない理由は何か。現状をどう変えたら実現できるかを考え、すべての制約を取り除いていくことです。

 ここで大切なのは、生産性や品質といった言葉の定義を共有しておくことです。私は、生産性とは「売れるものを売れる分だけ無駄なく作ること」、品質とは「お客の要求を満たす程度」と考えています。お客の要求を満たせば品質は高く、満たさなければ品質は低いということです。