続いて染谷氏が、キュービックでのユニークな採用の取り組みを紹介した。同社は2006年設立、インターネットメディア事業を中心としたITベンチャー企業だ。300名超の従業員の半数は学生インターンが占め、平均年齢は25歳弱と非常に若い会社である。正社員については、外部の新卒者ではなくインターンの大学4年生の中から、同社へのエントリー希望を募る内部採用が特徴的だ。「キュービックは企業ブランディングがまだ十分ではなく、会社の理念や知名度だけで応募者を集めるのは難しい状況です」と染谷氏は語る。特に中途採用については、ダイレクトリクルーティングのような攻めの採用も積極的に活用している、と話した。

 さらに中途採用については、山本氏が「今は完全に売り手市場。仕事に対しても条件重視からやりがい思考に変わってきている。だからこそ、求職者と企業とのコミュニケーションの量が採用に左右している」とトレンドを分析した。これからは企業が積極的に自社の情報を開示し「一緒に仕事をしよう」と呼びかける姿勢や、人事任せにせず、現場の責任者が自ら求職者に面談・スカウトするといった姿勢が望まれることを指摘し、「経営陣の強力なコミットメントが、人事戦略成功の条件である」と語った。

キュービック ピープルエクスペリエンスオフィス マネージャー 染谷和彦氏

今後はシニア、キャリア採用にも注力

 パネル後半では、採用者の定着や育成について議論が及んだ。まず染谷氏が、キュービックが取り組む社員育成プログラム「EX(エンプロイーエクスペリエンス)マップ」を紹介。社員へのインタビューを基に「入社後の体験をマップ化」することで、個々の社員の状況に合わせた「体験最大化」を実現すべく模索中であるという説明があった。

 菊岡氏は大和ハウス工業のシニア再雇用制度について言及。60歳到達後のシニア社員を、部門長、現場のマネジャー、メンター、プレーヤーの4コースに分け、それぞれに期待される役割を明確にしてふさわしい職場と評価を用意し、社内だけでなく外部からもシニアの活躍の場を作ることに注力している。

 中間層のキャリア採用については、山本氏が社員紹介のメリットを強調。「社員紹介では、自分を誘ってくれた人が社内にいるため仲間として働く意識やエンゲージメントも高まります。また、安心して相談できる人がいる状態を作り出せます」(山本氏)。「同時に、いきなりポストを任せるのではなく、会社の理解を深めるような1on1のコミュニケーションや横のつながりを作っていくことが、人材の定着にもつながっていきます」と語った。

 今後は社会情勢も大きく変わり、不確実性の高い時代になる。人事戦略としても、従来のように「新卒を一括採用し、10~20年かけて一人前に育てていく」という方法ではとうてい間に合わない。だからこそキャリア採用の即戦力が必要なのは明らかだ。

 ビズリーチの提唱するダイレクトリクルーティングのように、企業側も事業内容や展望などの情報を開示して、求職者に対して「わが社で働いてほしい」としっかり訴えていくことが、優秀な人材を確実に採るための非常に有効な手段となるだろう。山本氏は「旧態依然の待ち受け型の採用ではなく、これからは、優秀な人材採用のための戦略に、経営者と人事と現場が三位一体となってコミットしていくことが大事」であるとまとめた。