――事業がうまく回り企業が成長するかどうかは、トリプルAのレベルの高さ次第ということですね。

ピーダーセン:最終的には、そうです。トリプルAは、組織のアセスメントのスコアリングの軸であると同時に、しなやかで強い組織であるための原理原則でもあります。トリプルAという3つのレンズの付いたメガネを掛ければ、企業のどこに課題がありどう改善すべきかが誰にでも見えるようになります。これが、マネジメント・イノベーションの出発点です。さらに、トリプルAをフレームワークにして行動することで、問題を指摘できる社風を作り、改善する能力を高めていくこともできます。

 マネジメントの世界にも流行はありますが、このトリプルA経営メソッドは普遍的な原理原則だけに絞り込んであるため、2019年でも、2050年でも通用するはずです。

現代の企業に必要なマネジメント・イノベーター

――では、マネジメント・イノベーションを起こす「マネジメント・イノベーター」とは、どのような人材でしょうか。

ピーダーセン:マネジメント・イノベーションという語は私が尊敬するロンドンビジネススクールのゲイリー・ハメル教授をはじめ何人かが口にしていますが、それを実践する人材を「マネジメント・イノベーター」と名付けた例は、これまで見たことがありません。

 マネジメントに変革を起こすのは人であり、会社を変えていくには、問題の発見に加えて行動が求められます。ですからマネジメント・イノベーターには、トリプルAの理解をもとに、「主体性」を持って動く、「建設的」に思考する、「行動」を重視するという3つのスキルが不可欠となります。

――マネジメント・イノベーター育成の意義と、それによって得られる企業のメリットについて教えてください。

ピーダーセン:トリプルAを仕事のOSにしつつ、「主体性」「建設的思考」「行動重視」を継続的に実践できれば、人や組織を健全に動かせるリーダーになります。そのため、まず本人のやりがいやモチベーションが高まります。また、そのような人材が増えるほど企業の組織体質も強くなり、さらにマネジメント・イノベーターが活躍できる組織という善の循環が生まれます。そうなれば必然的に「熱意あふれる」社員の数も増え、組織は活性化し、事業環境の変化をピンチではなくチャンスに変えられる可能性が高まります。

 個人的には、この好ましいサイクルが日本の産業界、ひいては日本の健全な発展につながり、多方面でトレードオンが実現してほしいと考えています。バブルの崩壊後に社会や企業が硬直化し、「熱意あふれる社員」が6%しかいない現状を打破するために、変化の激しい時代を生き残るために、今企業に必要なのはマネジメント・イノベーションを起こす組織のベースとなるマネジメント・イノベーターなのです。

 トリプルAは、単なるきれい事ではありません。次回は、国内外のいくつかの企業を例に、トリプルAの維持や低下が企業にどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。また、簡単に体験できるトリプルA診断も紹介します。

大塚 葉(おおつか・よう) 日経BP 総合研究所 HR事業部 上席研究員
大塚 葉 日経BP入社後、「日経PCビギナーズ」発行人兼編集長、日経ビジネスオンライン、日経WOMANプロデューサー、日経BPコンサルティングカスタム出版本部第二部長などを経て現職。著書に『人材マネジメント革命~会社を変える〝カリスマ人事″たち~』『攻める周年事業で会社を強くする!』(いずれも日経BP)、『社史・周年史が会社を変える!』(日経BPコンサルティング)、『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。