コロナ禍でオンライン上でのミーティングや研修に取り組むようになった企業が急増している。オンラインでは、コミュニケーションや空間など相互のやり取りの制限があるので、これまで以上にファシリテーションスキルが求められる。これからの時代に求められるファシリテーションスキルとは何か、そしてオンラインでも企業の活性化につながる研修とはどんなことなのか――。この連載で、これらのことを解き明かしていく。

 初回となる今回は、300社以上の上場企業への研修実績を持ち、ファシリテーターの養成も行っているリンクイベントプロデュース(東京・中央)で組織開発ファシリテーター・研修講師として活動中の広江朋紀氏が解説する。

Q.なぜ今、人事部門にファシリテーションスキルが求められているのでしょう?

A.経営と現場をつないで新しい価値を生み出す「場」を牽引することが求められているからです。

 令和の時代に入り、百年に一度とも称されるパンデミック(世界的大流行)によって、私たちを取り巻く環境は、加速度的に変化しています。そうしたなかで、企業が持続的に成長するには、人事の役割も大きく変化することが求められます。

 具体的には、従来の終身雇用、年功序列、新卒一括採用といった固定化された制度運用を担う「オペレーション人事」から、環境変化に迅速に対応するための戦略立案・実行に貢献できる「戦略人事」へと変化することが必要です。

 これまでのように、単に全社の決定事項や情報を下ろすだけではなく、現場の声や知を集め、そこから新しい価値を生み出す場を牽引する結節点となることが人事の重要な役割となります。

 例えば、人事のミッションの一つに、従業員エンゲージメントサーベイ(調査)の結果報告の主管を務める会議の場があります。こうした場は本来、企業が戦略を遂行するために、その土台となる組織の現状を明らかにし、より良い状態になることを目的として開かれますが、往々にして調査結果の事実報告と今後の対策が一方的に示されるにとどまることがあります。この結果、現場も他人事で受け止め、何も変わらないというジレンマをよく見受けます。

 そこで今、人事に必要とされるスキルが現場の社員、一人ひとりの意思やアイデアを引き出し、組織的な価値に変換する機能としてのファシリテーションです。一方的な報告主体の会議をするのではなく、調査結果の裏にある社員の願いや感情をひもとき、参加者全員で共創解を紡ぎだす。現場が主体者として、決めた目標に腹落ちするような場がデザインできれば、戦略の実行度も高まるのです。

ファシリテーションが生み出す「対話による変化」

 会議のようなコミュニケーションの場は、目的ごとに大きく4つに分類することができます。「情報共有・連絡」「教育・啓蒙」「意思決定」「企画・アイデア」の4つです。

出典:広江朋紀 著『なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?』(同文舘出版)
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