東京と京都を拠点に活動する「和える」は、日本全国の伝統産業の職人と協力しながら、「日本の伝統を次世代につなぐ」ことを目的に子供向け商品などを開発・販売するベンチャーだ。東京と京都に自社ショップを持ち、ワークショップなども行いながら製品を販売している。

 人材を採用するにあたって、同社は外部の就職・転職サービスやウェブサイトを一切利用していない。採用の窓口は、自社のホームページのみだ。創業10年ほどの小さなベンチャーだが、国立大卒や東京大学大学院卒、テレビ局や消費財メーカーといった人気企業出身のいわゆるミレニアル世代と呼ばれる20代から30代の女性が集まってくる。(取材:丸尾 弘志=日経BP総合研究所 上席研究員)

 中小企業がいかにして優秀な人材を確保するか、という社長向けのセミナーにもよく登壇するという、和えるの矢島里佳代表取締役は、「ミレニアル世代が大切にしているのは、自分が『なぜ』働くのかという理由だ」と話す。「この仕事はなぜ生まれたのか」「どんな意味があるのか」「社会とどうつながっているのか」。それが分からないと、「なぜこの商品を売るのか」「なぜ今自分は営業の電話をしなければならないのか」という疑問のスパイラルに、ミレニアル世代は迷い込んでしまうという。結果、その企業で働く意義を見いだせず離職していく。

和えるの矢島里佳代表取締役。採用の窓口を自社のホームページに限定し、優秀な人材と効率的に出会える工夫を積み重ねる

大事なのは、「何のために働いているのか」

 若い世代をつなぎとめるために必要なのは、何よりもまず「自分たちの会社はなぜこの事業展開をするのか」をしっかり示す必要がある。しかし、多くの中小企業は、この「なぜ」を明確化できないことが多いという。

 「こうした『なぜ』を説明できない時点で、会社と従業員の間にミスマッチが生じている。ミレニアル世代の多くは、年収を一番の目的にしない。生活のために働くのではなく、人生を一層豊かに生きるための手段の一つとして仕事がある。自分の会社が社会でどのような役割を果たすのか、その役割を果たすために会社で自分がどんな貢献ができるのかを明確にしてあげなければ、彼ら、彼女らは定着してくれない」(矢島代表)。

 若い人たちの「なぜ」にきちんと答え、そのうえで能力的なミスマッチを事前に可能な限りなくすためには、既存のサービスを活用するのでは不十分だった。そこで自社の採用サイトを「何年もかけて練り直し続け」て、優秀な人材と必然的に出会える工夫を積み重ねてきた。