導入にネガティブな意見と向き合う

原田:パネリストの皆さんの企業は業種も事業規模も違います。自社に合ったテレワークのあり方を見極めるにはどうしたらいいのでしょうか。導入時にどんな苦労・失敗があったかも教えてください。

高野:2012年にフロントラインのスタッフにテレワークを導入し、その後、全部署でトライアルを重ねました。その結果、いろいろなメリットや課題が見えてきました。テレワークについての社内アンケート調査を実施したところ、「非常に満足度が高い」「利用したい」との声が上がってくるのですが、実際は利用者が増えませんでした。そこで利用が増えている部署と増えていない部署、それぞれの部長にヒアリングをしました。

 利用が増えている部署では、管理職層が「働き方改革で社員の働き方を改善したい。そのツールとしてテレワークを使う」という明確な意思を持っていることが分かりました。一方、利用が増えていない部署では、「自分の部署ではテレワークに合う仕事が見つからない」「ANAのカルチャーに合わない」「フェイストゥーフェイスのコミュニケーションが大事」というようにテレワークの利用に関しネガティブな意見が目立ち、所属長をはじめとした管理職層の考えがテレワークの浸透を大きく左右することに気づきました。

 こうした状況を改善するため、ネガティブな意見に対して、「本当にそうなのか」「こういう仕事を抱えている人はこんな使い方があるのではないか」「なかなか自律的に仕事ができない人にどうやって利用させるのか」と、各部署に寄り添って共に考えました。現場と丁寧に向き合うことで、約半年かけて当時40%くらいだった利用率を60%まで上げることができました。

 大事なのは「何のために使うのか」を明確に社内に発信すること。それと熱意を持って、あきらめずに、ネガティブな意見としっかり向き合うということではないでしょうか。

長尾:弊社のクライアントの多くは中小企業です。特に地方の中小企業の場合は、テレワークそのものが目的にはなりません。テレワークする必要がなければ導入はしませんし、そもそも差し迫った危機感もありません。

 地方の中小企業でもある程度ITは導入され、ネットにアクセスし、コミュニケーションツールとしてメールやチャットも使っています。しかし、ペーパーレスは進んでいませんし、ワークフローという機能がうまく活用できていません。経費精算などキャッシュレスのための体制もありません。IT導入が業務の効率化につながっていないという課題があります。いざテレワークをやろうと思ってもすぐにできないのが実状です。

 一方で、中小企業でIT化やテレワーク導入ができないのは、お金がないからと言われることがあります。実際にはITのコストはかなり下がっており、実質かかったコスト以上の費用対効果が見込めます。IT化やテレワーク導入を左右するのはコストではなく、意識の問題だと思います。