コミュニケーションの質と量に変化

原田:皆さんが考えるテレワーク導入のメリットについて教えてください。

高野:まず、当たり前ですが「通勤時間を別のことに充てられる」ということ。仕事が終わった後、特に在宅勤務の後にすぐに自分の好きなことに時間を使え、ワークライフバランス向上に直結しているのを実感しています。

 もう一つ分かったのは、フェイストゥーフェイスによるコミュニケーションの質の向上につながることです。社員同士が互いに離れた場所で仕事をする機会が増えたことで、逆にフェイストゥーフェイスによるやり取りの貴重さと、その重要性が再認識されました。例えば会議では、「この大事な機会を使ってどんな情報を伝えるべきなのか」「この情報はメールや電話会議で伝えるので十分ではないか」といった情報の取捨を厳密に考えるようになり、会議の質が上がったと感じます。結果的に、効率的な仕事の段取りを意識することにもつながりました。

 テレワークの理念は「時間と場所を有効的に活用する」ということ。この発想で効果的なコミュニケーションを実現できれば、テレワークのメリットや可能性はまだまだ広がっていくのではないでしょうか。

松村:3カ月間の長期出張でアジア各地を回っていた時、日本にいる部下から「モバイルワークをしている方が近くで仕事をしている時よりもコミュニケーションが増える」と言われました。常に部下と一緒にいると、口頭で伝えられるからと後回しにして、結局伝えないといったこともありがちです。離れた場所にいると、ちゃんと伝えないと仕事が回りませんので、その意味では部下とのコミュニケーションが増えたと思います。

長尾:地方の場合は通勤時間が短く、自家用車での通勤も珍しくありません。テレワークのメリットを強調してもピンとこないかもしれません。オリンピックで東京の道路が渋滞するかどうかは他人事ですし。

 地方という視点でテレワークを考える場合のキーワードは2つあると考えています。一つは介護離職対策です。現在、約300万人が働きながら介護し、毎年の介護離職は10万人規模だと言われます。首都圏か地方かにかかわらず、今後大きな問題となるはずです。テレワークで介護と仕事を両立させるICT利用も必要となってくるでしょう。

 もう一つはBCP(事業継続計画)です。全国的に雨や地震などの天災による影響が事業継続リスクとして懸念されています。2018年秋、首都圏では台風の影響によりJR東日本や私鉄の計画運休が相次ぎました。電車が動かないことが決まっているのに、従業員に出社しろとは言えません。BCPという意味でもテレワーク導入を考える必要があるのではないでしょうか。

 中小・地方の企業に対しては、介護離職対策とBCPの2点で危機感を共有してもらい、その備えとしてテレワークが重要であると提言すべきかと思います。