組織の成長は、自律的に学び続ける人材が集まる場を創ることにある。国際的な人材獲得競争の中で、企業の競争力を強化するために日本企業が取り組むべき課題と方策とは何か。企業の人事責任者と投資家それぞれの視点を踏まえて議論した。

 [この記事は「Human Capital 2019」(主催:日本経済新聞社 日経BP、2019年5月29~31日、東京国際フォーラム)でのパネルディスカッション「変革の時代に企業と個人が共に成長するためには」をまとめたものです]
(モデレーター=経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室長 能村幸輝氏、構成=寺島 豊、写真=稲垣純也)

経営戦略と人事戦略は「クルマの両輪」に

能村(敬称略、以下同):「週1官僚」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。週に1日だけ官僚として働いてもらうという取り組みで、先日、経済産業省が募集したところ、2人の募集枠に対して約1400人の応募がありました。従来、いわゆる終身雇用を前提として玉突き人事をしてきた役所でも、今やそういう取り組みを行っているわけです。

 ご承知のように、昨今の人材マネジメントをめぐる環境として、「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」の3つが指摘されています。そうしたなかで、経営戦略と人材戦略はクルマの両輪のようになってきている。また、個人のキャリア形成も多様化するなかで、企業価値を持続的に高めていかなければならない経営トップには、多様な「個」が存分に活躍できる組織やカルチャーを作ることが期待されています。

経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室長 能村幸輝氏

杉田:会社を変えようとする時、いきなり人事制度だけをドラスティックに変えてしまうようなケースが散見されますが、トレンドに乗って人事制度だけを新しいものに変えたところで、会社は変わりません。

 マイクロソフトでは、5年ほど前にグローバルCEOが交代しました。ちょうど転換期で、それまでのライセンスビジネスからAIやクラウドを活用したソリューションビジネスへ大きく方向転換しなければならない時期だったんですね。そのためには、ミッションやカルチャー、ビジョンといった会社の根幹に関わる部分を変えないといけません。リーダーシップのモデルやインセンティブのスキームについても、見直す必要がある。つまり、ビジネス上の強い要請があって、人事制度も変わったんです。経営戦略と表裏一体のように連動していたという点で人事制度に筋が通っていますから、弊社の場合、社員の理解が得やすかったのではないかと思っています。

日本マイクロソフト 執行役員 人事本部長 杉田勝好氏