早稲田大学は、2020年1月11日に行われたラグビー全国大学選手権・決勝で前年の覇者である明治大学を破って11年ぶりの優勝を果たした。この栄誉に導いたのが、2018年に監督に就任した相良南海夫氏、そして2019年夏からラグビー部を指導したスポーツ心理学者の布施努氏の2人だ。実は、優勝を果たす41日前の対抗戦では明治大学に7-36という得点で大敗していた。相良氏と布施氏は、どのように選手たちの意識を変革し、日頃の練習や試合での行動変容に結びつけたのか。勝つための組織づくりとヒトづくりの秘訣を2人に語ってもらった。
(取材・文=日経BP 総合研究所 ライター 吉川 和宏)

目標達成に向けて自ら考えて行動を変える組織へ

――監督に就任なさった際、相良さんは何がチームの課題だと思われていたのでしょう。

相良:早稲田大学のラグビー部は、常に「日本一を目指す」ことをミッションに掲げています。ただし、長らく優勝から遠ざかっていたので、私が就任した時点では多くの学生が実現できるものだとは思っていなかったでしょう。日本一になるためには、学生たちが「実現するんだ」という強い思いをもって、日々の練習に取り組むことが必要です。

 早稲田のラグビー部は、伝統的に学生自治の組織になっています(相良監督はラグビー部OB)。監督やコーチは、指導に当たって方向性を打ち出すことが主な役割です。日本一を目指すために厳しい練習が必要だからといって「これをやれ!」と指導しているわけではありませんし、そうしたところで学生たちに「やらされ感」が出てくるので成果が上がるとも思えません。

 そこで私が重視したのが、学生たちに主体性や自律性を持ってもらうような意識改革です。学生たちには「自分たちがどうなりたいかを考えなさい」と伝えてきました。高い目標を掲げて、これを実現するために自ら考えて行動を変えるような組織にしたいと考えたのです。ただし、100人を超える学生たちの意識を変えることは容易なことではありません。この変革をお手伝いしてもらうために、布施さんに指導をお願いしました。

相良 南海夫(さがら・なみお)氏
早稲田大学ラグビー蹴球部 監督
早稲田大学高等学院時に花園出場、早稲田大学では2年でレギュラーを獲得し、4年時は主将に。卒業後は、三菱重工相模原でラグビーを続けた。ポジションはFL(フランカー)。2007年に三菱重工相模原ダイナボアーズ監督としてトップリーグ昇格を果たした。2018年から早稲田大学蹴球ラグビー部の監督に就任。第55回(2018年度)ラグビー大学選手権ベスト4(準決勝敗退)。第56回(2019年度)に同部を11年ぶりの優勝に導いた功績が高く評価され、2020年に日本ラグビーフットボール協会の「ジャパンラグビーコーチングアワード2019 最優秀賞」を受賞
(撮影:稲垣 純也)