多様なミレニアル世代に対する個別対応のありかた

 一方で、丸吉氏は1980年以降に生まれた世代を「ミレニアル世代」と画一的に定義づけすることに懐疑的だ。

 「森さんの提唱する手法自体は非常に良いものだと思います。ただ、近い将来には世界の労働人口の半数がミレニアルとZ世代になると言われています。たしかにミレニアルという一つの世代でくくる分類は分かりやすいかもしれませんが、そこで思考停止するのではなく、数ある手法の中から自社に合った手法をきちんと判断して選択することが、現場の人事に課せられた使命だと思います」(丸吉氏)

ヤフー ピープル・デベロップメント統括本部 コーポレートPD本部 コーポレート戦略室 People Analytics Lab. 丸吉香織氏
組織編成・評価・表彰などの人事企画を経て、2018年より現職。現在は人事関連の分析や分析用データベースの環境構築、BIを使ったダッシュボード作り、またそれらの活用のためトレーニングを提供。エビデンスを知る・使う・教え合う人を増やす文化作りに従事。

 リアルタイムフィードバックについて、ミレニアル世代でもある丸吉氏自身は「自分がやりたいからやるという内発的動機で働くことが重要であって、称賛されたいから働いているわけではない」と主張する。それに対し、「同じ世代間であってもこうした価値観の違いが生まれることこそ、ミレニアル世代における個別性と多様性だ」と森氏は反論する。

 しかし、真っ向からぶつかる見解であっても彼らの連帯があるからこそ、対等な議論を生み、新しい解を見いだすことができる。

 石原氏は、森氏が重要性を訴えるパフォーマンスマネジメントは、「従業員が『期待されている』と感じることで仕事の生産性が上がるとするホーソン効果(1930年代に提唱された)を実現する手法ではないか」と示唆した。すなわち、本来はどの世代にも必要なマネジメント手法であるものの、日常的にSNSなどを通じてリアルタイムフィードバックを体験している人々にはなおさら必要な手法だと捉えられる。

BtoA 代表取締役 石原史章氏
従業員体験の向上に特化したクラウドサービス「BetterEngage」を開発・運営。カスタマーサクセスの一環で、顧客企業の「戦略的人事」の実現をサポートする。国内外のHRテックサービスやピープルアナリティクス事例を熟知。

 とはいえ、個別性を重視しすぎることも避けたい。社員が1万人いれば1万通りの制度を設計しなければならず、現実的ではない。「むしろ、個々人に適したフィードバックの仕方やタスク分配をどうするかという各従業員のアクション単位なら、テクノロジーやデータを活用できる範囲は広い」と丸吉氏は述べる。