これについて丸吉氏は、会社として何を目指すのか、そのためにどういう文化が必要なのかを考える『美意識』が最も大切だと熱弁する。

 文化を定着させるために制度や施策があり、それを実現する手段としてアナリティクスやテクノロジーがある。だからこそ、会社が何を目指すのかを言語化して共通認識を持つことが重要になる。丸吉氏のチームは人事データを分析する際には、9割以上の時間をデータ収集でも分析でもなく、「問いを立てること」に充てているという。

 ラスベガスのHRカンファレンスでは、HRテックではどのツールが良いかといった話よりも、「人事はどのような問題を設定し解決することで経営に貢献できるかが大切だ』という議論が多くなされていたという。「流行っているから」、「他社も導入しているから」ではなく、自社にとっての目的をもう一度考える必要があると土橋氏も警鐘を鳴らす。

 HRに対してそれぞれ異なる価値観を有する森氏・石原氏・丸吉氏。3人の立場は異なるが、テクノロジーを用いてHR領域から事業に直結する価値を生み出したい、そして「この会社で働けて良かったと感じられる価値を働き手に還元する」世界を実現したいという思いは共通だ。

 最後に、モデレーターの土橋氏が今後の抱負を尋ねると、石原氏は「データをもとに意思決定するデータドリブンHRを、特別なものではなく誰もが使える世界を目指したい」と語った。コーディングをAIが代替するような未来において、ソフトウエアそのものの価値が下がっていくと予測する彼は、ベンダー側もインサイトの提供に課金するようなモデルに変わらなければいけないと意気込む。

 また、パフォーマンスマネジメントを浸透させたい森氏も同様に、「管理職の誰もが当たり前に適切な1on1を実施し、社員一人ひとりの声を人事施策に生かし、社員が当たり前に助け合えるような未来の実現を目指したい」と熱い思いを語った。

 「私はもはやミレニアル世代という言葉でくくらなくても良いのではないかと思います。それよりも、1on1、HRテック、ピープルアナリティクスなど一人ひとりの声にきちんと傾聴できる手法が発達したことで、個々人に最適化された体験価値を提供できる可能性が広がってきたと感じています」(丸吉氏)

 これからの時代は、テクノロジーの進化によって「社員一人ひとりがどういう価値観・志向性を持っているか」にフォーカスを当てられるようになっていくだろう。組織として何を大切にしているかという「美意識」を追求することで、真の意味で組織の中で働く人が幸せになれる未来の可能性を垣間見ることができた。