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 新型コロナの影響を受けて、企業業績の悪化が報じられているが、その中でも目を引く一例が自動車業界だろう。日産自動車は2020年3月期で6700億円の最終赤字、三菱自動車は前期の赤字に続いて、今期は3600億円と巨額損失を見込む。

 赤字転落となれば、人員削減も含めて何らかの対策が求められるが、日本企業全般にはそうした考えはまだ薄いようだ。7月21日付の日経産業新聞の「社長100人アンケート」(145社回答)によると、雇用調整が必要と考える企業は回答者のうち25.2%で、多くの企業は新卒採用を減らしたり(51%)、中途採用を減らしたりする(54%)ことで、人員バランスをとろうとしている。本来であれば、業務変革や事業改革に伴い、従業員への早期退職なども考えられるはずだが、「正社員の早期退職を募集」は11%で、「雇用維持」を掲げる経営者が多い。

 企業が社会的な存在と考えれば、安易な雇用削減に手をつけたくないと考えるのは当然だろう。しかし、新型コロナの影響で流通業や旅行業など根本的な変革を迫られている産業が多いのも事実だ。雇用を維持したまま新たな事業構築をすることが理想だが、雇用維持にこだわると結果として成長の機会を奪うことにもつながりかねない。

 巨額赤字に陥った三菱自動車だが、こうした事態は初めてのことではない。大型リコール隠しなどが原因で2004年に経営危機に陥り、三菱グループ各社から5400億円もの投融資を受けて危機を脱出した過去がある。ただでさえ競争が激しい自動車業界で、生き残るのは難しい。そこで三菱グループの力を結集して三菱自動車を助けたわけだ。救済案がまとまった当時、三菱グループのある首脳に「投じた資金でどんなクルマを開発して、再生を目指しますか」と質問してみた。その答えは「工場があり、そこに社員がいるから」だった。つまり資金を投じたのは従業員の雇用維持が目的ということだ。「売れるクルマ作りは」と重ねて聞くと、「私は何も言わない」と打ち切られた。

 雇用維持を目的にして再出発したが、その後、日産・ルノーとの提携に頼り、結局は今日の事態に至っている。「雇用維持」を目的にしても、やはり競争力がないと成長はできない。

 今、産業界では成果主義をより重視する「ジョブ型」導入を急いでいる。「会社に定時に来て、終業まで滞在する」というコロナ前のスタイルを見直し、より仕事の達成度を測ろうとする動きは止められないだろう。同時に多くの経営者が心配しているのは、「ジョブ型」を導入したら、社員が効率よく働き、かつ生産性を高める組織になるかどうかにある。ジョブ型の導入に伴い、本当に一人ひとりが質の高い仕事をして、競争力を高めないと会社は生き残れないと感じているのだ。