注意してほしい点は、流行に乗っからないこと。最近だと、子供に食事を提供する地域コミュニティー活動の「子ども食堂」が話題になりました。そこで「うちもやってみよう」ではなく、自分たちの会社が取り組むべき活動とそのストーリーを考えてみてください。求職者は、「なるほど!」と膝を打つようなストーリーを求めているのです。

 例えば、美容院は日々水をたくさん使い、シャンプーや薬剤を流しています。ですから、私は理美容関係者に「水に関する社会貢献活動を考えてみてください。例えば途上国に井戸をつくる支援など……」と話します。つまり、自分たちが本業を通じて間接的にでも影響を及ぼしてしまう分野、また前述の水産業のように恩恵を受けている資源への貢献や還元という発想から活動の内容が見えてくるはずです。フットマッサージで事業展開しているある会社は、義足をつくる人たちを支援しています。とてもいい関連性ですよね。

地域の人たちを笑顔にする薬局

 私が関わった事例を紹介しましょう。茨城県筑西市のやまぐち薬局です。地方のどこにでもある、小さな処方箋薬局です。大手チェーンのドラッグストアの波にのまれ、この先の経営に不安を感じている時期がありました。

 そこで考えたのが「“笑い”は『くすり』」というテーマでの社会貢献活動です。年に一度、店内の棚をすべて片づけて、手づくりの高座をつくり、筑波大学落語研究会のメンバーに落語を披露してもらう落語会を開催しています。地域のお年寄りや子供たちを無料で招待し、毎回20~30人ほどが集まりますが、みんな終始笑いっぱなし。この活動をもう10年近く続けています。そして毎年、必ずメディアの取材が入ります。薬剤師業界も人材難といわれていますが、やまぐち薬局は採用に困ったことはありません。

やまぐち薬局が開催する落語会。地域住民の憩いの場となっている(写真提供:やまぐち薬局)

 この活動で大きく変わったことは、落語会がない普通の日にも、地域の人たちが薬局に集まるようになったことです。薬局は病気の人が薬をもらいに行くのが目的なので、普段から積極的に行きたい場所であるとはいえません。しかし、やまぐち薬局は下校後の子供たちが集まっておしゃべりをしたり、店が育てている花を見に地元の人が訪れたり、憩いの場としていつも賑やかです。未来の薬局のあるべき姿ではないかと、厚生労働省から視察チームが訪れたこともありますし、大手のドラッグストアチェーンが「勉強させてほしい」と連絡をしてきたこともあります。やまぐち薬局のコーポレートメッセージは「相談できる『くすりやさん』」です。

 こうして一年に一回のイベントを開きながら、お客さまに来店しやすい雰囲気であることを伝えると同時に、採用のイメージアップにもなる地域貢献を行っています。広報も兼ねているし、業界の未来を示してもいます。一石四鳥ともいえる活動ですね。