ロールモデルの知恵を発信・共有する「Sales Woman Network」

 「特に、子どもに手がかかる時期は、チームでスケジュールを共有する工夫をしました。例えば、製品のセールスでも手術の立会い・説明という方法だけでなく、事前に製品の勉強会を企画して先生同士の情報交換もしていただく試みをしたこともあります。たとえ、その場に私がいなくても仕事が回る仕組みを作るよう心掛けてきました」(田中氏)。こうしたロールモデルの貴重な知恵を発信・共有しようと、AMDDでスタートしたのが「Sales Woman Network」だ。

 もともと人数が少ない女性営業職は、勤務する部署や事業所が異なるだけでお互いに知りあう機会を失ってしまう。出産・育児をきっかけに営業職を諦めてしまう女性に、営業のやりがいを感じ続けてほしい。同じ悩みを抱えている女性営業職一人ひとりに、業界全体で連携することでさまざまなロールモデルがいることを知ってほしい――。こうした思いで活動をスタートしたという。

 「日々の業務に忙殺されて周りを見る余裕がないというのもあります。ただし、自分一人では難しい状況を乗り越えるやり方は、実はたくさんあります。チームとして最大限のパフォーマンスを発揮できるように意識付けをしていきたいと考えています。弊社では、ランチタイムにお互いの悩みを話し合う会を始めました。まずコミュニケーションをとることからスタートしています」(田中氏)。

 「チーム制にすることで、男性も女性も働きやすくなるのではないでしょうか。休めるときには休むという雰囲気作りも大切です。そして、自分が置かれている状態をすべて開示して、共有すること。横のつながりを大切にすることが活動を継続できるコツだと思います」と河野氏もエールを送った。

 パネルディスカッション後の質疑応答では、さまざまな発言が出た。例えば、男性管理職の参加者による「女性と男性のギャップは、女性から話してもらうことで埋められるのではないか」という意見に、「お互いが自分の状況を開示しあうこと、まず発信することが大切だと思います」(田中氏)、「まず、上司から開示してもらうと話しやすい。日々のコミュニケーションを大事にしたいと思います」(下田氏)と回答。営業職女性を増やしていくには1社だけでは限界がある。こうした業界団体での取り組みももちろん、現場での仕事のやり方を変える、上司の考え方を変える、そして、女性も男性もお互いにシェアし、助け合う意識を持って仕事に取り組んでいくことが鍵となるだろう。

原田かおり(はらだ かおり) 日経BP 総合研究所 HR事業部 ヒューマンキャピタルOnline編集長
原田かおり

出版社を経て、2000年 日経BP社入社。カスタム出版やオウンドメディアのプロデュースを数多く手掛ける。ゴールドクレジットカード会員誌『クオリテ』(東急カード)、Webマガジン『大人の心得帳』(NTT東日本フレッツ光/東急文化村)など編集長として企業機関誌やオウンドメディアの創刊・リニューアルを多数経験。2018年2月、「社内コミュニケーション改革セミナー」全体プロデュース・講演。2019年5月、「CHOsummit2019」全体プロデュース・講演、ヒューマンキャピタル2019「働きやすい組織と環境の新しいカタチパネルディスカッション」モデレーターなど務める。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。