買い手市場で、採用の難しい時期が続いている。新卒採用に力を入れている中小企業も多いが、苦労して内定を出しても、4月の正式入社を待たずに学生が内定を辞退することもある。即戦力を期待する中小企業にとっては、大きな損失だ。
 なぜ、学生は内定を辞退するのか。企業側がその理由を知ることができれば、対策を考えることも可能だろう。学生の内定辞退を防ぐ方法について、日々多くの中小企業の採用ブランディングを支援する村尾隆介氏と、中小企業経営者向け月刊誌「日経トップリーダー」発行人の伊藤暢人が意見を交わした。

伊藤:2018年度と19年度に、私は大学で講義を持たせていただきました。2018年度の感触でいうと、一般的には2、3社から内定を取っている学生も多いのですが、内定をもらってもずっと就職活動を続けているケースも珍しくありません。中小企業からすると、内定を出したあとで辞退されるケースも多かったんですよね。

村尾隆介氏(以下、敬称略):確かに2018年度は、特に中小企業で内定辞退が続発したシーズンだったと思います。極端な例を挙げると、私がコンサルティングをした会社で、10人に内定を出して全員に断られたケースがありました。この傾向は、2019年度もおそらく続いていると思います。中小企業は対策が必要ですね。

伊藤:そのためには、なぜ学生が内定を蹴るのか、理由を知らなければなりません。よくあるのは、親が反対するケース。たとえ規模がそんなに変わらなくても、親は名前が知られている会社に行きなさい、と言います。知名度の低い中小企業の場合、会社の良さが親には全く伝わっていないんですね。まずは、「本人+親」という視点が必要ではないでしょうか。

村尾:まさしくその通りで、今の学生は、親を喜ばせたいという視点で就職先を選ぶことがある。中小企業の社長によく理解していただきたいのは、就活生は本人だけが判断しているのではなく、家族ぐるみで進路を決めているということです。

 だから、親御さん向けの会社説明資料を用意したり、内定を出したりした後は、手紙を書くのもいいと思います。きめこまやかな対応は、大企業にはできませんから。

伊藤:学生の親御さんに会いに行かれる社長もいますよね。九州でも北海道でも。そこまでされると、親御さんも断りにくくなります。出張旅費が10万円かかったとしても、一人採用するのに数十万、数百万円かかることを考えたら、無駄な経費とは言えないでしょう。

村尾:親御さんにしてみたら、大切な子供を会社に預けるという感覚もきっとあるでしょう。「いやいや、俺の時代は就職先を決めるのに親なんて関係なかった」と思うかもしれませんが、結婚だと必ず親に挨拶しますよね。それと同じだと思って、ぜひそのパワーは惜しまないでほしいですね。

日経BP総研 客員研究員/スターブランド共同経営者
村尾 隆介氏
中小企業のブランド戦略ブームを起こしたブランディングの第一人者。日経BP総研 客員研究員として〈すごい採用プロジェクト〉を展開。通信制高校で有名な第一学院高等学校で起業家教育を教える教師でもあり、若い世代との接点も多い。ファッション好きで社長のスタイリングも手掛ける。年間出張300日超、世界を飛びまわる元ホンダマン。