政府は先だって、「全世代型社会保障検討会議」の中間報告を行いました(詳しくはこちら)。

 最終報告は2020年の夏に行われる予定ですが、大きく、年金・労働・医療・予防と介護の4つの分野について検討されており、そこには70歳までの定年延長について盛り込まれました。同時に、年金の受給開始年齢を75歳まで拡大することも触れられています。

 要するに、「早くから年金に頼るのではなく、できるだけ長く働いてくれ」と国民に促しているわけです。

 もっとも、100歳まで生きると言われるようになった時代に健康な人が60代でリタイアするのは現実的ではありません。実際に、「なるべく長く働きたい」と望んで定年延長を歓迎する人はたくさんいます。

 問題は、その内容です。政府の指導のもと、企業がどれほど努力してみたところで、それが従業員一人ひとりにとって望ましい形になるとは限りません。そうではないことの方が多いでしょう。

 大手広告代理店に勤める私の知人が来年60歳になりますが、会社が示している65歳までの継続雇用制度の条件に従えば、給与は今の半分以下に減ってしまうそうです。しかも、1年ごとの見直しがなされ、その都度減らされることもほのめかされています。65歳までですらこうなのですから、さらに70歳となれば、より厳しい状況になることは充分に考えられます。

 先の中間報告では、70歳までの就業機会確保についての具体策も挙げられています。

 それによると、まず「(1)雇用による措置」として、「定年廃止」「70歳までの定年延長」「定年後または65歳までの継続雇用終了後も70歳まで引き続いて雇用(子会社・関連会社含む)」というような項目に加え、「定年後又は65歳までの継続雇用終了後、再就職の実現」というものがあります。つまり、どこか他の会社へ行ってもらうということです。

 さらには「(2)雇用以外の措置」というくくりがあり、そこでは、定年後または65歳までの継続雇用終了後に、フリーランスになったり起業したりする者との業務委託契約の締結などについても踏み込んでいます。しかし、そもそもフリーランスや起業で成功するかどうかは本人次第で簡単なことではありません。

 これは、早い話が「企業努力にも限界があり、長い人生をどう食べていくかは労働者一人ひとりが自分でなんとかしなくてはならない」ということです。

 ビジネス環境が劇的に変化し、ただでさえ余力がなくなっている企業に対し、「すべての従業員を70歳までちゃんと雇用しろ」と言うのが無理な話だということは、政府も十分に分かっているわけです。