医療機関や研究所などを対象に専門機器のレンタルを行っている企業で、一つの課を任されていA氏は、年度末を前にため息をつくばかりでした。課の営業成績が昨年度と比較して明らかに落ちているのです。

 半年ほど前、先輩と若手がチームを組む方式から、一人ひとりで動く形態に変えたのがまずかったようです。一人で営業に出るようになった若手社員が契約に結びつく仕事がなかなかできず、チームの足を引っ張っていました。

 なかでも、入社3年目を迎えたB君は、先輩社員から離れて以来、一つの契約も取れていません。このままでは、配置転換も視野に入れなければならないところです。

 B君がいつまでたっても契約を取れないことについて、A氏はいくつかの理由を考えていました。

・そもそもほかの社員と比較してやる気がない。
・自分に自信が持てていないから弱気の営業しかできない。
・自分だけが契約を取れないことに対する危機感が薄い。

 こうしたことを鑑みながら、ここ数カ月いろいろ叱咤激励してきたのですが、B君がいい方向に変わる気配はありませんでした。

 では、A氏がB君に対して考えていた理由はどれも外れていたのでしょうか。

 前述の3つの理由が、当たっているのか間違っているのか、筆者の私にも分かりません。もしかしたら、B君自身にも分からないかもしれません。それに、たとえ当たっていたとしても、そこに意味はありません。B君が契約が取れるようになるか否かは、そんなことに関係ないからです。

 部下が思うように業績を上げられない時、その原因を部下の意思や内面に求めるのは正しいやり方ではありません。それをやっている限り、問題解決には至りません。

 こうした思考に陥っているA氏に「なぜそんな評価を下すのか」について質問をすれば、おそらくこんな答えが返ってきます。

 「だって、B君は一つの契約も取れていないからですよ」

 なんだか、おかしいと思いませんか?

 一つの契約も取れないということは、そもそもほかの社員と比較してやる気がないのだ。なんで、ほかの社員と比較してやる気がないと判断したかといえば、一つも契約が取れていないからだ。

 一つの契約も取れないということは、自分に自信が持てていないから弱気の営業しかできないのだ。なんで、自分に自信が持てていないから弱気の営業しかできないと判断したかといえば、一つも契約が取れていないからだ。

 一つも契約が取れないということは、自分が契約を取れないことに対する危機感が薄いのだ。なんで、契約を取れないことに対する危機感が薄いと判断したかといえば、一つも契約が取れていないからだ。

 もう、お分かりのように、この思考法に陥れば、同じところをぐるぐる回っているだけで、一つの突破口も見いだすことはできません。