マネジャーの下には4人の部下がいましたが、そのうちの2人がほとんど同じ内容の不満を口にしました。「いろいろ提案してみても、上司が積極的に検討してくれないのでモチベーションが下がってしまう」というのです。1人は「いつまでも上司の机の同じ場所に提案書が放置されているのを見るのはとても嫌な気分だ」と訴えていました。

 そこでマネジャーに話を聞いてみると、「せっかくの部下の提案だからじっくり検討したい」という意向であることがわかりました。ただ、プレイングマネジャーとして忙しい毎日を送っているために、なかなかその「じっくり」ができないのです。

 マネジャーの置かれた状況は理解できますが、やはりコミュニケーションがあまりにも不足していると感じました。
「ありがとう。大変だったろう。ちらっと見たけどなかなか興味深いね。今度の週末にじっくり検討させてもらうから、時間をくれるか?」
こうした一言を伝えておくだけで部下は安心するのです。

 もちろん、検討したのちには、問題点もたくさん出てくることでしょう。しかし、そうしたことを指摘するうえでも、最初に肯定的なメッセージを送っておくことで部下は素直に耳を傾けてくれます。ろくな反応も示さずにおいて、時間が経ってから「あれ、やっぱり難しいね」と言われたら、誰だって嫌になります。

 部下を理解し、上手に育成するためにも、大いにAIを見習って動いてください。日々の挨拶、ちょっとした相談事など、部下からなにかしらのメッセージが送られてきたら、すぐに肯定的な反応を示してあげましょう。

石田 淳(いしだ・じゅん) 株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者
石田 淳

 米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。「行動科学マネジメント」として確立。その実績が認められ、日本で初めて組織行動の安全保持を目的として設立された社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事に就任。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行う。趣味はトライアスロン&マラソン。2012年4月には、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250kmマラソン、2013年11月に南極100kmマラソン&トライアスロンともに完走を果たす。著書に、『短期間で社員が育つ「行動の教科書」』(ダイヤモンド社)、『40歳を過ぎても「会社に必要とされる人」でいるための学ぶ技術』(日経BP)など多数。

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