今、すべての日本企業はかつてない危機に直面しています。原因は言うまでもなく、新型コロナウイルス「COVID-19」の大規模感染です。この未知のウイルスは、私たちから多くの命を奪い、代わりに多大な経済的損失を与えようとしています。

 いずれ収束したとしても、その後に待っているのは茨の道となるでしょう。企業は、この間に失ったものを長い年月をかけて取り戻さねばなりません。

 今年の初め、中国の武漢でなにやら新しい疾病が流行しているらしいというニュースにふれ、このような事態になることを想像していた人がどのくらいいるでしょう。

 中国の人口が14億人を突破していること、その一部は仕事や観光で世界中を訪れていること、とくに我が国は地理的にも近く交流が盛んなことなどを考えて、「日本にも少なからず入ってくる」ということは誰もが考えていたはずです。しかし、現実はそれをはるかに超えていました。

 当初は、アジアの混乱を対岸の火事と見ていたであろうヨーロッパ諸国をはじめ、世界中がこのウイルスとの戦いに巻き込まれました。しかも、ビジネスパーソン、主婦、学生、高齢者、子供たちといったすべての人がその戦いに駆り出されているのです。みなさんも間違いなくその一人です。

 今回のことで、企業は自らの危機管理能力を露見することになりました。政府の要請を待たず早くからテレワークに切り替えた企業もあれば、いつまでたっても社員を満員電車で通勤させている企業もありました。

 報道されているように、電通や資生堂などの大企業でも、大規模なテレワークが行われました。もちろん、中小企業でも同様のところは多々あったでしょう。こうしたことを可能にするのは、普段からの危機管理に対するシミュレーションと、的確なリーダーシップの発揮です。

 今さら言うまでもありませんが、危機管理とは危機が訪れた時に取り組むべき案件ではないのです。

 しかしながら、実際には、大まかな方針は経営サイドから降りては来るものの、細かな点は現場のマネジャーの裁量で決めざるを得ないケースも散見されました。

 ある居酒屋チェーンの、まだ感染が確認されていない地域の店長は、アルバイト従業員に手指の消毒をどう徹底させるか、今まで大声で行っていた来店客へのあいさつをどうするか、料理や飲み物を提供する時にお客様にどのくらい近寄るべきかなど、判断に困ることが次々と頭に浮かんできたと言います。

 地震が起きた時のお客様の誘導についてはマニュアルに書いてあるけれど、感染症が流行した時の行動については何一つ、明文化されていなかったのです。