石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 私は頻繁にアマゾンで買い物をします。書籍はもちろんのこと、ウェアラブル端末から衣類までなんでも買います。なにか必要なものがあるとアマゾンのボタンをクリックすることが習慣になっているのです。つまり、見事にアマゾンに囲い込まれているというわけです。 もしかしたら、あなたもアマゾンのヘビーユーザーかもしれません。その理由は、「便利だから」に尽きるのではありませんか?

 忙しいビジネスパーソンにアマゾンが圧倒的な支持を得ているのは、他のサイトと比べて購入までの手続きが格段に少ないからです。

 いまさら私が説明するまでもありませんが、アマゾンのサイトでは送り先や支払い方法などの必要情報について、最初の購入時に入力したデータがすぐに表示されるため、欲しい商品のボタンをクリックするという行動だけで購入できます。また、商品によっては「その日のうちに」届けられます。

 人はすぐに結果が得られる行動を継続する傾向にあります(これを「即時効果」といいます)から、ごく簡単な行動ですぐに商品を手にできるアマゾンを、多くの人が使い続けることになるのです。

 アメリカは「行動科学」研究の最先端を走っており、企業も、人間の行動原理をよく理解したうえでビジネスを設計しています。

 その点、日本企業はまだまだ下手。楽天ですら「不明瞭な写真を見比べながら選んでいく」というような余計なステップがあり、面倒な印象を与えます。

 それでも、楽天の場合はポイントがかなり付くシステムになっているため、比較的時間に余裕のある主婦から支持されています。「アマゾンよりは面倒だけど、ポイントが付くのが魅力的」というわけです。

 つまり、アマゾンは即時効果によって、楽天はポイントによって顧客の行動を強化するという努力をしている一方で、「この企業は顧客の囲い込みなど一切、考えていないのでは?」と思えるようなサイトも多く存在します。

 私の知人女性は、特定のミネラルウオーターを愛飲しています。いつもアマゾンで購入していたのですが、ある時「もっと安いところを」と考えて別の企業のサイトを探しました。そのうちの1つに決め、基本情報を入力して購入。そして、後日「再購入しよう」と出先からスマホでサイトにアクセスしたところ、とても操作がしにくく嫌になり、結局、またアマゾンでの購入に戻ったそうです。

 行動科学マネジメントは、その名の通りマネジメントのためのメソッドではありますが、マーケティングにも大いに応用がききます。というのも、「人間の行動」に着目しているからです。

 多くの企業のマーケティング部門が正しく機能していないのは、データや理屈をいじってばかりいて、人間の行動を見ていないからです。