石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 ある生活資材メーカーの新商品企画会議に、入社して2年目のA君が初めて自分の企画をもって出席することになりました。その会議は、社長自ら出席し、企画の可否について厳しい意見を述べるので有名でした。

 A君の上司である30代後半のB課長は、A君の出してきた企画について、まだまだ検討すべき課題は残されているものの、なかなか面白いと感じました。そこで、思い切ってA君を企画会議に出席させる気になったのです。

 ただ、実際にその企画を通すのはなかなか大変な作業です。本当だったら、残された課題についてA君と打ち合わせを重ね、会議ではB課長が企画意図などの説明をするという方法をとるのが無難でした。にもかかわらず、B課長は、あえてそれをせずにA君を出席させました。

 というのも、どんな小さなことでも自分で判断せずにいちいち聞いてくるA君に対し、B課長はかねてより「頼りなさ」を感じていたのです。
「一度、社長にガツンとやられるくらいでいい。そのほうがA君のためになる」

 みんなの前で失敗させることでA君が成長するだろうと考え、あまり細かく指示を出さずに会議に臨ませました。

 会議の結果は惨憺たるものでした。

 B課長と違って、社長は丁寧にA君の話を聞くことはしてくれません。
「それ、どういう購買ターゲットを予測しているんだ」
「コスト計算はどうなっているんだ」
「ライバル商品の分析はしたのか」

 社長は次々と質問を浴びせ、A君がそれに的確に答えることができないと知ると、「こんなのを大事な会議に連れてきてどうする」と上司であるB課長を叱責しました。

 社長の指摘はどれももっともでした。B課長には、今回の会議の結果はだいたい予測できていました。わかっていたけれど、自分も叱責されることを覚悟でA君に細かく指導することを避けたのです。

 B課長は、「今回のことで、企画を通す大変さがわかっただろう。次からはもっと自発的にいろいろ課題を見つけてくるはずだ」と期待していました。

 しかし、そうはなりませんでした。多くの先輩たちの前で社長から厳しく言われたA君は、ひどくショックを受け、間もなく退社してしまったのです。