本連載ではたびたび、自分の部署の業績も上げつつ、部下育成もしなければならないマネジャーの難しい立場について考えてきました。

 この2つの重要な仕事を両立させるためには、部下に結果につながる行動を教えていくしかありません。部下が結果を出すことが部下の成長につながり、部署の業績もアップするからです。

 ただし、それは口で言うほど簡単なことではありません。ただでさえ時間が足りないと嘆いていたところに、働き方改革によって、さらに条件は厳しくなっているのです。

 しかも、今は、同じ20代であっても価値観はバラバラ。かつてのように「世代間格差」だけで語れる時代ではなく、「今の若者たちはこうだろう」という十把一からげの判断はできません。つまり、部下一人ひとりの「動機付け条件」に着目した、より細やかな対応が求められるのです。

 こういう状況にあって、マネジャーが自らの価値観に縛られてしまうと、大きなストレスをため込むことになります。

 多くのマネジャーたちと接していて、彼らが無意識のうちに部下の行動と自分の価値観のズレに、苦しんでいると私は感じています。

 ある部下の例を挙げましょう。大卒後、中堅の人材派遣会社に就職したA氏(24歳)は、上司が「おかしな注文をする」ことに悩んでいます。クライアントへ提出する書類など、迅速に仕上げようとするといい顔をせず「もっと時間をかけろ」と言うのだそうです。

 おそらく、その上司は「与えられた時間ギリギリまで粘ればいいものができる」と考えているのでしょう。自分自身がそういう仕事のやり方をしてきたのだと思います。

 しかし、その価値観は万人に共通ではありません。それに縛られていると、「なぜ、ギリギリまで粘らないのか。やる気がないのか」とイライラするだけでなく、部下を潰してしまいます。

 さらに、ある上司の例を挙げましょう。ここ数年、業績を伸ばしているPR会社でマネジャーの立場にあるB氏(42歳)は、6人いる部下について「本当に仕事の面白さを分かっているのは2人だけ」と話します。残りの4人については、「それを知らずにかわいそうだ」と。「かわいそうだから何とかしてやりたいが、自分の力ではもはやどうにもならない」と嘆いているのです。

 たとえば、クライアントの都合で、どうしても休日に仕事をする必要が生じた時、積極的に「自分がやります」と手を挙げるのはいつも2人のうちのどちらかだそうです。

 「べつに代休を取らせないと言っているわけではない。たまに休日出勤してどんな損があるのか。そういうことも乗り越えて初めて、仕事の面白さが分かるのに」

 このB氏の言い分、私たちの世代には理解できなくもありません。いちいち「休日出勤が必要なんて聞いていないので」と拒んでいたら、ビジネスはなかなか広がっていきません。