石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 当たり前のことですが、人はみな一日一日変化しています。あなたも、あなたの部下も同様です。しかし、一回強く印象づけられたことは長く尾を引き、なかなかその人の変化に目が向けられなくなります。

 教育関係の企業で働く40代の女性Aさんは、課長として3名の部下を指導する立場にあります。部下育成に関してAさんは、最近ひとつの学びを得たと思っています。ひょんなことで人は変わるということを実感したのです。

 今年28歳になるB君は、これまでAさんの悩みのタネでした。入社した時から、まったくと言っていいほど上昇志向が感じられなかったからです。
「責任が増えるくらいなら出世したいとか思いません」
「食べていけるだけ稼げたらそれでいいです」
「A課長のように部下を育てたいとかいうのもないですし」

 地位にも昇給にも執着せず、ただ淡々と会社に通っているという様子なのです。

 2年先輩に当たるC君や、4年先輩の女性Dさんが正反対のタイプだっただけに、AさんはB君に物足りなさを感じ、心の中で線引きしていました。
「彼には期待できないな。いずれ辞めていくんじゃないかしら」

 そのB君の働き方が、半年ほど前から明らかに変わってきました。転機は結婚でした。もともとB君自身、結婚したからといって自分に変化が起きるなどと思っていなかったようです。ところが、いざ結婚してみると「守るべきものがある」という気持ちがわき起こってきたのでしょう。「頑張って出世したい」と口にするようになりました。

 突然の変化を周囲にからかわれながらも、積極的に仕事に取り組むB君の様子を見て、「安易に切り捨てなくてよかった」とAさんは胸をなで下ろしています。