「職場でハイヒールやパンプスを履くことを強要されるのはパワハラである」と、女性たちが声を上げています。これに対し、厚生労働大臣もコメントを出しており、今後も大きな話題になっていくことが考えられます。

 私は女性のファッション事情に詳しくありませんが、たしかにヒールの高い靴を履いて一日中働いていたら、足への負担が大きいことは想像がつきます。もちろん、おしゃれのために自ら選んで履いている女性もいるでしょう。一方で、「そうあるべき」という周囲の圧力があり、つらいけれど仕方なく履いているケースも多いのだと思われます。

 とくに、ホテルやレストラン、デパートなどの接客業では、女性が歩きやすそうなフラットシューズを履いているのはほとんど見たことがありません。一般企業でも、部署によって暗黙の取り決めがあるのかもしれません。

 男性の靴も、しっかりした革靴はそれなりに重く、長く履いていれば疲れます。しかし、女性のパンプスと比較したら格段に楽でしょう。そういう状況にあって、女性従業員にばかり無理を強いるのはパワハラであるという認定が下されても不思議ではありません。

 では、どんな靴なら職場に履いていっていいのでしょう。

 ある金融系企業の女性管理職は、「つま先が出るサンダルタイプを履いている女性従業員がいたら注意している」と言います。人材派遣業で働く20代男性で、「黒い革のスニーカーを履いていったら上司から怒られた」という人もいます。

 これは、どちらも職場の「常識」なのでしょうが、特に若い人にはなかなか理解できません。むしろ、彼らなりに「身なりに気をつけている」結果かもしれないのです。

 それを、自分よりずっと野暮ったい格好をしている上司から否定されたら、「いわれのないパワハラを受けた」と感じることでしょう。

 靴に限ったことではありません。服装、髪型、言葉遣いなど、企業で働いている以上、その職場にふさわしいものが求められます。一人の従業員の逸脱した振る舞いによって、企業としての信用を失うこともあり得るからです。

 しかし、その「ふさわしい」は極めてあいまいなのです。

 これまでは、上司が「ダメ」と言えばそれに従うのが当然でした。しかし、これからの時代、明確な基準を持たずに身なりや言葉遣いに言及すれば、即パワハラと取られかねません。

 そういう時代には、双方が共有し合える「基準」を設けることが不可欠です。

 たとえば、ヘアカラーについて「濃い茶髪はいいけれど金髪はダメ」などというのではなく、実際に色見本を提示してOKのラインをつくることです。それを破っている部下に対して「ダメだよ」と伝えてもパワハラにはなりません。言葉遣いについても、たとえば、顧客に対して使ってはいけない言い回しなどを具体的に明記したリストを作成しておくことです。